花王の男性用シャンプーブランド「サクセス」が2020年2月、フルリニューアルした。発売したシャンプー、コンディショナー計7商品の出荷は当初の予想を上回り、2週間で160万本に到達。「サクセス」のリブランディングはいかに消費者のインサイトをとらえ、人を動かしたのか。ブランドマネジャーを務める水町直樹氏に聞く。
── 2月24日の発売から2週間で160万本出荷となりました。
今回、フルリニューアルした7商品の累計出荷数160万本というのは、「サクセス」ブランドの新商品史上、最高の数字です。2月と3月はブランド全体の売り上げも前年比130%となっていて、既存品にも効果が及んでいます。
シャンプー市場としても、ことしに入ってから毎週売り上げは伸びていましたが、「サクセス」のリブランディング後の4週間で平均7%近く拡大し、シェアを伸ばしただけではなく、市場全体も活性化できました。
要因のひとつとして、流通の方にもリブランディングへの期待を寄せていただいており、店頭でも大きく打ち出してくださったことが大きいと思います。ターゲットである30歳代がテレビやWebで、アイドルグループ「KAT-TUN」の亀梨和也さんを起用した広告を見て、店頭で目立つところに並んだ商品を目の当たりにし、トライアルが進んだのではないでしょうか。
── ターゲットが30歳代とのことですが、若返りも目的のひとつだったのでしょうか。
はい、意識していました。「サクセス」は30年近く続くブランド。ロイヤルティの高い利用者を有する半面、若い世代の新規ユーザーをなかなか獲得できていないのが課題でした。
ここ10年ほどは40歳代がメインターゲットで、俳優の大谷亮平さんとお笑い芸人のサンドウィッチマンさんをキャラクターに起用していました。ただ、ブランドのそもそものターゲットは30歳代なのです。かつては伊藤英明さんや渡部篤郎さんを起用し、当時の30歳代に向けたコミュニケーションをとっていました。なので、今回は原点回帰と言えます。
きっかけのひとつは調査から得られたデータです。シャンプーに限らず、1年間でブランドのアイテムを買ったことがある人の数を調べたところ、総数はほぼ横ばいか、微減という結果でした。しかし、年齢層別の構成比では、34歳以下は下落傾向で、年齢の高い層が増えている。このままでは先細りになってしまうという危機感から、30歳代をしっかり押さえていこうと考えました。
── 表現面など、ターゲットを意識して変更したところは。
リブランディングであっても、既存の利用者から「いままでと違う」と思われてしまうような、ブランドの本質は変えてはいけません。たとえば、洗浄力やさっぱり感はそれにあたります。当社のブランドは比較的歴史の長いものが多く、会社としても、常に変えるべきことと変えてはいけないことに留意しています。今回のリブランディングでは、それを踏まえた上で、さまざまなチャレンジをしました。
たとえば、私も含め、ブランド担当チームのメンバーは「サクセス」は「おじさん向けブランド」というイメージが定着しつつあると感じていました。そこで自分たちでも使いたくなるようなブランドにしたいと考えました。
テーマは、「スタイリッシュさと遊び心の両立」。ブランドロゴは...