吉野家は2019年5月、牛丼や豚丼など6種の丼を缶詰にした非常用保存食「缶飯」を発売した。初の試みとなる缶入り商品は、発表直後から話題を呼び、注文が殺到。初回生産分は即完売となった。吉野家が、なぜ缶詰を開発したのか。外販事業本部の小山田宗冬氏と諏訪和博氏に話を聞いた。

非常時でもおいしい食事──想定外のヒット
──外販事業本部とおふたりの役割について教えてください。
諏訪和博氏:外販事業本部は吉野家の店舗以外の事業、eコマースを含めた通販事業や、流通などへの卸売を手がけています。事業本部の中で、事業や商品の企画、販促まで幅広く担当しています。
小山田宗冬氏:諏訪の部署で立てた計画に基づき、商品を開発するのが私の担当です。新規開発商品はもちろんですが、既存商品のリニューアルも業務のひとつです。
商品開発に加え、生産工場の手配、原料調達や商品の供給ルートも設定しています。
──「缶飯」は即完売となりましたが、その後の販売状況は。
諏訪氏:昨年5月に発売し、当社の公式通販のみでの展開でした。缶詰という商品形態は私たちにとっても初めてでした。正式な発売ではありましたが、生産量は限られていたため、どちらかというと市場の反応をうかがうテストマーケティングとしての要素の濃いものでした。
ところが、「吉野家が牛丼の缶詰を出した」と、多くのメディアが注目くださいました。好意的な評価をいただけたのはよかったのですが、まさか、すぐに完売するほどになるとは思ってもいませんでした。
小山田氏:今回、発売の段階で初年度の販売目標を10万缶としていましたが、あっという間に売れてしまいました。
昨年夏ごろにはまだ増産に対応できる生産体制が整っていませんでした。年末になり、ようやく大量生産できる工場が手配できたので、当面のオーダーに対応する体制が整いました。こうした事情もあり、1月末時点で販売数量としては25万缶以上というところです …