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トップの現場力

最高の職場環境でサービスの質向上 現場から企業のブランド力を高める

秋本 英樹(リンガーハット)

長崎ちゃんぽんの専門店「リンガーハット」やとんかつの専門店「濵かつ」を主としたチェーン店を経営するリンガーハットは、2017年で創業55周年を迎えた。主力の「リンガーハット」は2017年2月末時点で644店舗に拡大し、ショッピングセンター内のフードコートにも続々新規出店している。リンガーハットグループでは3期連続最高益を叩き出している。

2019年度にはグループ全体で1000店舗を目指すという飲食業界のトップランナーのひとり、秋本英樹社長が考える「現場力」とは。

リンガーハット
代表取締役社長
秋本 英樹(あきもと・ひでき)氏

1954年、長崎県生まれ。近畿大学第2工学部卒業後、1978年4月浜勝(現・リンガーハット)入社。1998年5月取締役を経て、2014年5月より代表取締役社長(現任)。

──2009年に業績が悪化しながら、現在の好調に至ったプロセスについて教えてください。どのように復活を遂げたのでしょうか。

当時は少しずつ業績が悪化していて、「このままではまずい」と危機感を抱いていたものの、解決策がなかなか見つかりませんでした。そうこうしているうちにガクンと売り上げが落ち、いよいよ崖っぷちに立たされたのです。ちゃんぽん自体の味には自信があったので、味以外で付加価値をつけなければ勝機はありません。

そこで、会長兼CEOの米濵(和英氏)が国産野菜に目をつけました。産地に赴いて国産野菜を口にした時、そのみずみずしいおいしさに感動したからです。1985年ごろからキャベツの契約栽培を始め、もやしの自社工場生産なども行っていたのですが、海外産の野菜も多く使用していました。リンガーハットグループは年間で1万8400トンもの野菜を使用しています。これだけの野菜をすべて国産化するとなると材料費は約10億円も跳ね上がります。

それでも「国産に切り替えられない野菜は断固使わない」と決め、思い切って国産野菜にシフトしました。当時はまだ国産野菜を使用している飲食店は珍しく、時代に先んじた斬新な取り組みでした。

しかし一時的に業績は上がったものの、その後は浮き沈みが続きました。創業50周年を迎える2012年に「このままではまた経営難に陥ってしまう」と再度危機感を抱き、開催予定だった50周年パーティーを経費削減のため中止にしました。すでに準備が始まっていたので少なくないキャンセル料が発生しましたが、そのお金で今後の成長につながる取り組みをしようと、リンガーハットの理念をまとめた冊子「リンガーハットフィロソフィー」を作成して、社員やパートタイマーに配りました。

その背景には「教育に力を入れて社員とパートの心を合わせ、現場力を底上げしたい」という思いがありました。そのためには、各スタッフがリンガーハットの理念をしっかり理解し、それぞれの経営者意識を高める必要があった。そうすれば自然と売り上げが上がっていくだろうと考えたのです。

冊子には企業の理念や実践訓に加えて、リンガーハットの歴史も記しました。第一部では「すばらしい人生を送るための人としての心構え」、第二部は「経営者意識を高めるための心構え」を説いています。この冊子には良い人生を歩むためのヒントや正しい判断を下すための考え方が書いてあり、それは創業者の米濵豪が築いてきた人生哲学・経営哲学が基盤になったもの。もはや自己啓発書と言ったほうがいいかもしれません。

「迷った時はこの一冊に立ち戻ればいい」という冊子になるように、経営層が1年以上かけてスタッフのための指針を練り上げました。

冊子が形骸化しないよう、現場でもさまざまなシーンで活用しています。店舗で読み合わせを行ったり、月例会で朗読したりと、自然と頭に入るように工夫しています。こうした取り組みにより、各スタッフが「売り上げを最大化するためにはどうすればいいか」「最短時間で業務を行うにはどうしたらいいか」などと主体的に考えるようになり、現場力の向上につながりました ...

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