
マーケティングの背景にあるビジョンに着目
藤村和宏ゼミは、「ビジョンとマーケティング」に着目したケース分析を行い、学部生のみならず大学院生や社会人も参加して議論や研究を進めている。
2014年、サントリーのシングルモルトウイスキー「山崎」が、世界最高のウイスキーに輝き、日本人の味覚にあう日本のウイスキーをつくり続けてきたブランドが世界で評価されたが、ゼミではこのサントリーを一つのケースとして、ビジョンとマーケティングについて他社と比較を行った。藤村教授は、「同社の『やってみなはれ』という社員共通の価値観が新しい挑戦を促し、企業の姿勢として長期的に物事を見ることを可能にしている」と話す。ゼミでは「ものづくりだけにこだわらない方向性が、価値観を実現するために重要なのではないか」など、さまざまな視点から考察しマーケティング思考を養っている。
ブランド(企業)のビジョンや意思を持つことと同時に、販売の拡大に重要なのは、顧客起点のマーケティングを実践していくことだ。ゼミにおいてもビジョンが、いかにマーティングの実践に活かされているか、が議論される。藤村教授は「顧客の中に入り込み、生活スタイルや価値観の現状や変化を察知することは重要であるが、一方で自分たちの強みやポリシーを顧客の満足に変えていくことも重要である」と指摘する。
ブランドの価値を受け入れてもらうには
藤村ゼミの卒業研究では、実証実験も盛んに行われている。例えば「ブランドのアンチエイジング」をテーマにしたゼミ生の研究では、サントリーの「角ハイボール」に注目した。ウイスキーのロングセラーブランド「角瓶」の新たな飲み方「角ハイボール」の提案によって角瓶は若者の人気を集め、若者のブランドとして復活している。ブランドのアンチエイジングがどのように起きたのか、文献研究だけでなく、アンケート調査の実施によって実証的に明らかにしようとしている。
「角ハイボールのように、新しいスタイルを打ち出す際には、社会に受け入れられるまでに、それまでのブランドイメージがスイッチングバリア(顧客が提供者を切り替える際に感じる障壁)として働く場合もあります。そのため、消費者とのコミュニケーションを通じてそのバリアを壊す必要が出てきます。つまり新たなスタイルの提案と …