言葉の持つ力とその現れ方
飯野ゼミナールは、飯野勝己准教授が企業での勤務を経て、静岡県立大学国際関係学部の准教授に着任した2009年に開設された。
飯野准教授の専門は言語哲学で、言葉の持つ力を中心に研究を進めている。私たちが日常に使用する「言葉」は、情報を他者に伝える働きを持つとともに、言葉の受け取り手に良くも悪くも様々な影響を与える潜在的な力も持つ。飯野准教授は、特に暴力性を内在した言葉の力に注目し、哲学・思想など各方面の専門家との研究プロジェクトも立ち上げ、多角的に考察を行っている。
研究対象の一つとして学生らが興味を持って学んでいる事柄に、メディアによる表現がある。
「例えば、私たちが日常の中で触れる代表的なメディアであるテレビやインターネット上のニュースやコンテンツの中にも、直接的に暴力が描かれる暴力表現もあれば、実名報道、過熱取材といった構造的に抱える暴力性もあります」と飯野准教授は言う。
メディアの形式が多様化し、情報が溢れている現代。企業においても、オウンドメディアを通じて、手軽にコンテンツを発信できるようになっているが、情報がどのように受け取られるかについて、多角的な視点を養うことは、今後ますます求められていく力になっていきそうだ。
自分の想いを込めた作品づくりで得る多角的な視点
飯野ゼミでは、日々の活動としてコミュニケーションやメディア理論に関する文献の輪読を行っており、現代のメディア表現に関して議論を通じて知見を深めている。輪読と議論を通して多くの意見や視点に触れることで、さまざまな角度から、情報を取捨選択し、判断する力を養っている。また、こうした机上での学びの他に特徴的な実践活動も行っている。それがドキュメンタリー映画制作である。5年前から学生が自らの関心をもとにドキュメンタリー映画の製作を行っている。
静岡県立大学では、三年次からゼミに所属するが、ゼミに入った三年生はまず、プロや先輩ゼミ生が作ったドキュメンタリー映像を鑑賞しながら、視聴者としての目線から離れ、「どのようなコンセプトで」「何を伝えたくて」「どう表現するか」という制作者の立場から考える。そして約一年かけて、学生自身が企画を立て、監督・撮影・編集を行って作品を作り上げる。毎年1月には学内で制作したドキュメンタリー映画の上映会を行い、発信の機会を設けている。
「作品を実際に、学生や教員に観てもらうことで、『作って終わり』ではなく、生の反応や評価を次へつなげていくことを意識している」(飯野准教授)。
この活動を通してゼミ生は …