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販売を支援する新手法

消費者主導の購買活動から販促の新しい仕組みを考える

小林啓倫(経営コンサルタント)

オムニチャネルは新しいステージに向かおうとしている。最新のオムニチャネル動向や消費者の心理の変化、小売店やメーカーが考えるべきことなどについて、経営コンサルタントの小林啓倫氏に聞いた。

既存のチャネルを統合するだけでなく、消費者の欲求充足活動(小売店での購入とは限らない)全体を捉え、チャネルの最適化を検討しなければならない。

目指すべきオムニチャネル

消費者庁が、この1年間に商品・サービスを利用する際に利用した販売形態について聞いたところ、「インターネット通販」を利用したと回答した人は43.9%だった。さらにその理由として、「営業時間を気にせず買い物ができるから」、「品揃えが豊富、インターネット通販、カタログ通販でしか買えない商品があるから」という回答が多かった(「消費者意識基本調査」2015年 消費者庁調べ)。消費者が自らの主体的な判断や、消費者主導の購買行動を望んでいる様子をうかがうことができる。こうしたネット通販の利便性を前に、小売店は実店舗の強みを基に販促支援策をどのように考えるべきだろうか。

一つはネットと実店舗の融合を目指すオムニチャネル戦略がある。実店舗の強みを活かしながら、ネットとの相乗効果を生み出すためにデータ連携やシステム統合、新たな組織作りが求められている。具体的には、商品情報、在庫数、顧客情報、接客履歴などの情報を統合し、実店舗とネット間の送客を円滑にできるほか、ECサイトでの行動履歴と店舗での購入履歴を管理することによって、マーケティング戦略の立案・分析もできるようになる。集められた情報を解析して、たとえば「A氏はライフステージが変わりそうだ」という情報を把握でき、そこに向けたプロモーションを打ち出すことができる。

しかし、日本における大手小売店主導の既存のオムニチャネルは在庫の統合や顧客情報の共有など必要最低限のところで留まっているように見える。もちろんそれも重要で、企業には大きな投資や改革が求められるが、「来店した客に商品を売って届ける」だけでは既存チャネルを活かすだけのマルチチャネルに留まる。また既存の情報を統合するだけでは、消費者行動を理解する上では圧倒的にデータが足りない。

目指すべきオムニチャネルは、まさに「オムニ(すべての)」という接頭語が示す通り、DMやウェブ広告、アフターサービスといったすべてのチャネルやタッチポイントを統合した形で、消費者の欲求充足活動(小売店での購入とは限らない)全体を捉え、チャネルの最適化まで行うことだ(図参照)。それにより、ネット通販単体での利便性をはるかに上回る、消費者にとって本当に快適な空間が実現される。次のステージへ向かうためにも、消費者主導の欲求充足活動を実現する手法をいくつか紹介していきたい。

消費者主導でチャネルを考える

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「レベッカミンコフ」ニューヨーク店にある巨大スクリーンはタッチポイントになっており、商品を選ぶと店員が試着室まで持ってきてくれる。商品にはRFIDが埋め込まれており、どの商品に興味を示したのかなど顧客の動線が把握できる。



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自宅のキッチンや洗濯機、冷蔵庫に設置することを見込んだ「アマゾン・ダッシュボタン」は、製品ロゴの付いたボタンを押せばすぐに製品が自宅に届けられる仕組み。ゴミ袋やカミソリ、洗剤など十数種類のブランドが用意してある。

米国ファッションブランド「レベッカミンコフ」は、実店舗を徹底的にデジタル化する“コネクテッドストア”という取り組みを進めている。たとえばニューヨーク店では …

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