企業が売り上げを高め、顧客を拡大――その過程にはいつでも販売の現場を大切にする社長の知恵が生きている。本連載では、販売の現場から次々とユニークなプロモーションを生みだす成長企業の経営陣を紹介。その販促の考え方を取り組み方とともに紹介する。
取材・文 上妻英夫(KIプレス)/経済ジャーナリスト メルマガ「いま、売れる方法はこれだ!『上妻英夫の販促大学』」

代表取締役会長の渡邊喜雄氏。カインドウェアの商品は宮内庁御用達である。
フォーマル市場を創造しフォーマル文化を創った企業
老舗企業でありながら、既存の事業にとどまることなく、時代の変化を把握して常に新しい事業をおこし、勝ち残っている企業がある。メンズとレディースのフォーマルウェアを全国の有名百貨店などで販売するカインドウェアもその一つだ。
創業は明治27年(1894年)。今年で120年を迎える。日本のフォーマルウェアの市場を確立した先駆的な企業で、創業当時は、洋装を求める社会ニーズに応えて古着商としてスタート。戦後、日本の礼節を重んじる風土に着眼し「略礼服」を生み出し、世に送り出した企業だ。略礼服のトップメーカーとして、全国の百貨店や専門店から信頼を得て、「フォーマルウェアといえば、カインドウェア」という知名度を築いた。1994年には、高齢社会を見据え、ヘルス&ケア事業部を発足し、百貨店で介護用品を先駆けて販売してきた。
同社の渡邊喜雄会長は「当社は還暦を2回経験した大還暦の会社です。今まで続いたのは社会的に価値があったからだ、と評価した上で、これからどういう進路を選択するか、が問われています。基本を見直し…