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顧客創造に挑んだ人たち

「酒育セミナー」に「KAYOIGURA」...コト消費で日本酒市場の活性化に挑む

菊水酒造

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海外における日本食ブームもあって日本酒が見直されているが、日本酒人口は減少傾向にあり、歯止めがかかっていないのが現状だ。そうした中で、積極的な商品開発で独自の市場を開拓しているのが菊水酒造。蔵元だからできる、新しいフードスタイルを提案する情報発信型ショップを開業した。今回はその新規事業の展開の後半をレポートする。

第1回の記事はこちら

第2回:酒に関連した新しいコト、モノの体験の場を提供

ロングヒットを続ける生酒の商品

まだ“日本酒復活”の兆しは見えていないが、個々の企業努力でマーケットシェアを伸ばす動きは活発化している。その中の1社が、独自の企業戦略と商品開発力を持ち、中堅の蔵元で知られる菊水酒造(本社・新潟県新発田市)である。

同社の創業者である高澤節五郎は挑戦的で進取の精神に満ちた人物であったと伝えられている。その初代の心意気を引き継ぎ、五代目の高澤大介(現社長)は、伝統的な醸造技術を伝承しつつも、時代の技術者を育成することを使命として活動を続けている。

同社は、「顧客の声」「顧客ニーズ」を強く意識した、革新的な商品開発を行うことが特徴・強みである。41年前の生酒ブームの口火を切ったのが「ふなぐち菊水一番しぼり」(200ml、税込278円)で、ロングヒットを続け、年間1000万本を販売。累計で2億5000万本という販売実績を持つ。

なぜここまでヒットを続けているのか。奇抜なデザインのアルミ缶、味はフレッシュでフルーティーな香り、いままでにないコクのある中にもさらりとしたおいしさが口コミで広がっていった。一度味わった人には「忘れられない旨さ」として多くの清酒愛好家に支持されている。

そのほかにも、低温貯蔵で1年以上熟成させた「熟成ふなぐち」、新米のみを使用した「新米新酒ふなぐち」、酒粕焼酎を加えた香り高い「薫香ふなぐち」などを発売している。

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写真を瓶や缶にそのまま印刷するパッケージ

同社は挑戦と進取の精神を持つ社風。「飲み手の立場から“良い酒とは何か”を探求し続けています。お酒を通じた豊かな暮らしに貢献したいと思っています」という高澤社長の信念で新規事業も積極的に展開している。

東京の街中の秋葉原に、今までにない日本酒の体験ができる場所を作った。それが7月5日にオープンした二つの蔵である。一つは前号で紹介した「KURAMOTOSTAND(蔵元スタンド)」もう一つが「KAYOIGURA(通い蔵)」だ。「KAYOIGURA」は、JR秋葉原駅と御徒町駅の高架下に開業した「日本百貨店しょくひんかん」と菊水酒造のコラボレーションショップ。

新規事業を担当した、マネージャーの宮村伸一氏は「古くからある酒屋の小売用として庶民に愛された“通いとっくり”の文化を継承しながら、新しい日本酒ユーザーを発掘し、情報提案型の店舗にしていきたい」と話す。通いとっくりとは、かつて酒屋から酒を買う時に、酒屋が店のとっくりにお酒を詰めて顧客に販売していたことを指す。つまり顧客にとっくりを貸し出しており、そこには店の屋号が書かれていた。そうした習慣を取り入れ、KAYOIGURAオリジナルのとっくりを使った詰め替えの販売を行っている。

同店は、常に新しいコトやモノを体験できる場所(空間)を提供することが狙い。アシスタントマネージャーの宮林誠之氏は「そのほかにも、お客さまが持って来た写真やデザインを瓶や缶にその場でプリントし、世界に一つだけのお酒を販売してます」と話す。

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