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販促NOW ツール編

“妊娠7カ月目の人”だけ!ターゲットを絞ったDMで成約率2倍

田中みのる(ライズマーケティングオフィス 代表)

(1)「妊娠7カ月『befa!』のある生活カレンダー」は、その時期の身体の変調に寄り添いながらサービス内容を紹介。
(2)妊娠7カ月の主人公が登場する漫画でサービスの利用メリットを解説。
(3)「おなかの赤ちゃん実物大シート」の商品見本。

ウェブやサイネージなど"デジタルの広告"が当たり前になり、世の中の情報量が爆発的に増加した。あまりに多いので、顧客に届かず埋もれる広告があるのは当然だ。そして、デジタルの広告は基本的に「待ち」のツールである。メールマガジンなどは「攻め」のツールと言えるが、コストが低い分、競合も多い。「毎日数十通のメルマガが届くから、全部を見ていられない」などという意見をよく聞く。

その点、DM(ダイレクトメール)は「顧客まで届く」可能性が高いツールだと、私は考えている。ただし、見るからに"売り込みくさい"DMはすぐに捨てられることになるので、内容がしっかり設計されていることが前提だ。特に、ターゲットのセグメントは成否を左右する。

今回紹介するDMは、ターゲットの絞り込みが成果につながった事例だ。結果から言うと、従来のDMに比べ、成約率が約2倍に向上した。広告主はベネッセコーポレーション。出産前後の夫婦向けに情報誌とグッズのセットを毎月送付する「たまひよbefa!」の、新規会員獲得を目的としたDMだ。

同社では、妊婦・育児の情報サイト「たまひよnet」に出産予定日を登録した会員の「マタニティリスト」と呼ばれるハウスリストを持っている。同社 たまひよ事業部「befa!」担当の鈴木良子氏によると、以前はこのリスト全体に、定形外サイズと言われる大判のDMを送付していたが、数万通を発送して入会率は1.7~2.0%だったという。

そこでこの改善を目指し、まずターゲットを絞り込んだ。対象を、「会員全員」から「妊娠6か月の人」に変更。そこに、妊娠7カ月を迎えた時の赤ちゃんの状態を実感できる「おなかの赤ちゃん実物大シート」や、その時期の身体の変調に気付きを与える「カレンダー」など、受け取り手の共感を促す内容物を封入した。さらに、封筒は定型サイズとして発送できる大きさに変更し、コストを削減した。 さて、肝心の反応率だが、2013年4月に8600通発送した結果、入会率が3.96%に向上。以前に比べ、約2倍の反応率である。しかも経費を削減した上での成果だ。その後も同じ内容で、毎月7カ月目を迎える会員にDMを送り続けており、反応率は一定の基準を維持しているという。

1年間、この連載で効果的な販促ツールを紹介してきたが、DMを含め、販促物は顧客の共感・共鳴を演出するコミュニケーションツールであるべきだと、今回の事例からも再確認することができた。情報過多の時代であるからこそ、顧客との関係性を深めるツール作りがこれからも必要となっていくことだろう。

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田中 みのる(たなか・みのる)氏

ライズマーケティングオフィス代表。1989年大阪中央郵便局着任、97年から法人営業、社員育成などを経て、10年に独立し、ライズマーケティングオフィスを設立。メディア接触時のターゲット・インサイトを追究し、効果の出る販促物・チラシの制作や、ウェブ・モバイルを活用したクロスメディアのプロモーションについて、全国でコンサルティング、セミナーを数多く手掛ける。

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