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企業の資産を活かす 事業デザインのための「共創」プロセス

SXSWで注目 日本発の「共創」事例

大瀧 篤(Dentsu Lab Tokyo)

2023年3月10日から19日にかけ、アメリカのオースティンで開催されたテクノロジー・音楽・映画の祭典「SXSW」。現地では新たな技術が多数展示され、領域を超えた共創を体現している。ここでは実際に出展をしたDentsu Lab Tokyoの大瀧篤さんが、自身のプロジェクトと現地で目撃した日本発の「共創」事例とその要点を振り返る。

(01)SXSWの電通ブースの様子。「触覚」を拡張する「Hugtics」のほか、「食感」「嗅覚」を拡張する展示も。

ハグに再現性を付与した「Hugtics」

電通は2018年からSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)に出展しています。私が考える出展の目的やメリットは、新たなテクノロジーやプロトタイプの実験場として活用できる点。現地では世界中から集まる多様な分野で先進的な取り組みをする人々の意見がもらえるため、開発途上のプロジェクトにとってかけがえのない資産になります。また思いがけない分野の人や企業との出会いがあり、至るところに共創の種があるのも特徴。ベンチャー企業も多数出展しているのは、そのためだと実感しています。

今回、電通からは現地で3つのプロジェクトを発表しました。その中で私が担当する「Hugtics(ハグティクス)」は、特に共創の要素が強いプロジェクトです。「Hugtics」は「ハグ」と「ハプティクス技術」(触覚のフィードバックを与えられる技術)を合わせた造語。人間の幸福度を高める行為であるハグを、テクノロジーの力で再発明し、メンタルヘルス領域をはじめ多様な社会課題の解決に貢献することを目指しています。SXSW 2023では、その第一歩として“自分で自分を抱きしめる”体験や、他者のハグを転送する体験型デモンストレーションを行いました。

共創パートナーとして研究者の髙橋宣裕さんにチームに入っていただき、本施策のコアテクノロジーである人工筋肉を用いたハグ再現技術を担当してもらいました。電通チームはビジョン設定や体験デザイン、脳波解析やLED付きインナーベスト制作などの面から協業しています。

世界的にみて医療の発達により人類の平均寿命は伸びる一方、精神面での課題を抱える人も増加の一途をたどっています。その社会課題にアプローチするために、信頼や愛着を強めたりストレスを低減させる効果を持つ「ハグ」に着目。Hugticsではテクノロジーによって時間や距離を超え、自身や離れた人とハグができるほか、データを残しておけば著名人や亡くなった人ともハグができます。前述のメンタルヘルスに加え、エンターテインメント領域の活用も見据えています。

共創の仲間を増やすには、相手に「プロジェクト参加の意義」を感じてもらうことが大切です。そこで広告クリエイターの技術である、ビジョンを描く力が役立ちます。本プロジェクトでも、取り組む意義や実現する未来に髙橋さんが共鳴くださったことで、仲間になっていただくことができました。ハグや脳波のデータ取得、社会実装が広がる、といったメリットも後押しになったと思います。

(02)「Hugtics」はベストを着用して体験する。ベストにLEDを...

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