事業主とクリエイターが密になってプロジェクトを推進するために、必要なことは何だろうか。Preferred Roboticsは2023年5月、人の指示で家具を動かすロボット「カチャカ」の販売を開始した。開発に際し、デザインイノベーションファームのTakramなどクリエイターの協力を得たという。
家具ロボットという新しい事業を開発
Preferred Robotics(以下PFRobotics)はAIを中心とした先端技術の研究・開発を行うPreferred Networksからスピンオフし2021年に設立したベンチャー企業で、主にBtoB・BtoC向けの自律移動ロボットの開発を行っている。
「カチャカ」は、そんなPFRoboticsが家庭向けに開発した、家具を自動運転できるロボットだ。コンパクトなボディに高度なテクノロジーが搭載され、自己位置の認識や音声の認識、画像認識による物体の検出など、家庭ごとに異なる空間でも性能を発揮できる仕様になっている。第一弾として、「カチャカ」専用の棚「カチャカシェルフ」を発売した。
「すべての人にロボットを。」を掲げる同社は、Preferred Networksが2018年に展示したお片付けロボットを契機に、BtoB向けだけでなく、BtoC向けの商品の開発を開始した。当初はアーム付きのロボットなども想定していたが、家庭用としては高価格になってしまうため断念。より機能を削ぎ落とした結果「モノを運ぶ」ことにフォーカスしたロボットを開発することに。そうして生まれたのが、この「カチャカ」だ。
開発にあたり、同社はこの商品をロボットではなく、あくまでも家具として販売することを考えた。家具である以上、部屋になじむデザイン性という要素は欠かせない。そこで、以前から協業していたTakramに協力を打診した。
当時の状況について、マーケティングを手がけるPreferred Networksマーケティングマネージャーの久野祐揮さんは「私が入社した2019年から、『カチャカ』の開発が本格的にスタートしました」と振り返る。高い技術や開発能力をもつPFRoboticsの得意領域を、デザイン・クリエイティブの観点からTakramがサポートする体制となった。さらにプロダクトデザインはGEN SUZUKI STUDIOの鈴木元さんに依頼したことで、「PFRobotics×Takram×GEN SUZUKI STUDIO」の三位一体での開発が始まった。
「カチャカ」本体やシェルフのデザインは鈴木さんが担当した。鈴木さんが考案したデザイン案とその考え方が、「カチャカ」の方向性を決定する重要な要素になったと久野さんは語る。
「四角形を、部屋に家具が設置された状態を意味する“定”、円形を、家具が動き回る状態の“動”と捉え、それをデザインに落とし込んだとき、四角形と円形が繋がったような、今回発売した商品を真上から見た形になります。商品のコンセプトとデザインが合致したことで、PFRobotics側も具体的な方向性をイメージでき、『これは商品化できる』とより強く思えるようになりました」(久野さん)。こうして、「定と動」をコンセプトに据え、ブランドアイデンティティを組み立てることが決定した。
一方のTakramは、ユーザー体験全般にわたるプランニングから...