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デザインの見方

人生を豊かにする生活にとけ込むデザイン

粟辻美早

『ESPRIT’S GRAPHIC WORK 1984ー1986』(ESPRIT、1987)

80年代後半、私が美大生の頃、デザイン業界は広告の仕事が全盛で、百貨店やファッションビルなどのキャンペーンが世の中のムードをけん引していくような躍動感のある時代でした。ポスターをデザインする仕事に憧れて、広告業界を目指す美大生も多かったのですが、私は迷っていました。

アートディレクターとして活躍されている方々を尊敬し、発表される作品の巧みな表現やスケールに圧倒される日々でした。しかし、自分がその道に進むのは、何か違うと感じてもいました。私にとってデザインは、ポスターのように情報を発信するものではなく、もっと生活に根付いたものだったからです。それは私の両親がデザイナーで、生活にデザインがとけ込んでいたからだと思います。家具や小物などのプロダクトをはじめ、食事や会話、旅行といった体験など、あらゆるものに両親の美意識のエッセンスが散りばめられており、生活とデザインは常につながっていました。

そんな中、就活も始まり、自分の将来について考えていたとき出会ったのが、アメリカのファッションブランド「ESPRIT(エスプリ)」のデザインでした。

『ESPRIT’S GRAPHIC WORK 1984ー1986』という作品集には、エスプリの1984年から1986年までの広告やパッケージ、ショッピングバッグ、タグやグッズなど、商品にまつわる、あらゆるグラフィックデザインが収録されています。おそらく私は雑誌で...

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