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2020年代のアートディレクション

誰も気づいてない美しさに気づける人間でありたい。

相楽賢太郎(POLARNO)

デジタルキャンペーンからグラフィックまで多様な仕事を手がけて来た相楽賢太郎さん。2017年に独立後、デザインへの取り組み方が変わってきたという。

POLARNO 相楽賢太郎(さがら・けんたろう)
1985年新潟県新潟市生まれ。東京工芸大卒業。2008年アドブレーン、2010年電通 CDC(出向・常駐)を経て、2017年よりフリーランス。2018年POLARNO(ポラーノ)を設立。

"点"の発想から"線"の発想へ

──大学卒業後はアドブレーンに就職し、その後、電通に出向されていますね。

入社3年目に電通に出向して、電通に常駐という形で7年半仕事をしました。まだプロダクションのデザイナーとしても半人前だったんですが、アートディレクターとして仕事をしたいという気持ちが大きく、アドブレーンの先輩だったカイブツの木谷友亮さんや電通の清野信哉さんが行っていた、電通 CDC局に出向の希望を出したところ、すんなりと行かせてもらい、常駐となりました。グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしましたが、CDCに行った当初は主にデジタルキャンペーンに取り組んできました。

もともと紙媒体に強いこだわりもなかったので、試行錯誤を繰り返しているデジタルという領域は実験的でとても魅力的でした。また、当初はいまほど世の中にコンテンツが溢れていなかったので"広告コンテンツ"という領域がかなり自由で、みんなが注目してくれる分野でした。正解がわからない中でどうやったら面白がってくれるだろう。どうやったら広告として意味があるんだろう、と模索しながら作っていた記憶があります。

今はどんどん世の中から暇がなくなり昔ほどユーザーが能動的に参加する広告コンテンツが効かなくなりましたが、その時代に学んだことはいまでも根っこにあると思います。

ソフトバンク/♬SoftBank「登場」篇

ソフトバンク/♬SoftBank「卒業」篇

ソフトバンク/♬SoftBank「新時代」篇

──相楽さんには、ADの師匠的な人がいません。迷いはありませんでしたか?

いままで何人かのADの先輩の下で学ばせてもらいましたが、明確なデザインの師匠と呼べる方はいないかもしれません。特に電通に行った当初はいきなりADという役職についたので、常に余裕がなかったし、力もないから、自分が思い描いているものに達することができずひたすら時間をかけて目の前の仕事をなんとか完成させては「ああなんとかなった…」ということの繰り返しで、その場限りの"点"でクオリティを出すことに必死でした。

最近は以前よりは早い段階で完成形が見えるようになり、歴史だったり、この先だったり、"線"を意識するようになったと思います。自分は基本的には新しいもの好きで、すこしでも新しい表現を、という気持ちだけで今までものを作ってきましたが、最近はそれだけじゃだめだなと思うことも多くなりました。特に最近の宮本浩次さんのソロプロジェクトやソフトバンクの仕事などには今まで築かれた歴史だったり美しさだったりがあって、僕はそこに後から参加しただけ。ですので、いきなり何か新しいことを打ち上げるだけではなく、これまでのことを大事にしながらデザインをしています …

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