4月11日、2020年就航予定のLCC ZIPAIRの発表会で、SIX 矢後直規さんは同社社長やファッションデザイナーと共にステージに立った。広告会社のアートディレクターがそういう場に立つことは極めて稀なことだが、そこには矢後さんの考えるアートディレクターとしてのあるべき姿がある。
モノではなく思想をデザインする
──入社11年目。この10年、自身を取り巻く環境で大きく変わったと感じることはありますか?
ここ2、3年で働き方は相当変わりました。以前はプレゼンをやってまた次のプレゼン…と大きな波が次々にありましたが、今は緩やかな波の中で働いている印象です。また、この1年ぐらいで「デザイナーはこれまでに経験したことがない時代の過渡期、変革期にいる」と思うようになりました。メディアが変わり、働き方が変わる中で、誰かがやった仕事をなぞったり、憧れている人を目指したりするのではなく、自分のやり方をもたないとデザイナーとしてやっていけない気がしています。
──時代の過渡期、変革期と感じるようになったきっかけは何だったんですか?
ひとつは子供が生まれて、親として一人前にならなくてはいけないと思ったこと。自分の価値観をきちんと持って、正しい、正しくないを判断し、きちんと世の中に提示していけるようにならなければ、という意識が強くなりました …