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「ポスト2020」のアートディレクション

未来産業をつくり、未来そのものを描くアートディレクターは「可視化士」

榊良祐(電通)

ある仕事をきっかけに、電通 榊良祐さんは自らが持つアートディレクターとしての力を新たなことに活かし始めている。現在、デザインストラテジストと名乗り、食のデジタル化に挑む榊さんが考えるアートディレクターの未来とは?

電通 デザインストラテジスト/アートディレクター/オープンミールズファウンダー
榊良祐(さかき・りょうすけ)

2004年電通入社。アートディレクターとしてさまざまな企業のキャンペーン、ブランディングの企画立案、制作を担当。その経験を活かし現在は、広告領域に留まらないソリューションを開発・実行するデザイン・ストラテジストとして活動。近年の主なプロジェクトに、『東京防災』のプロジェクト(東京都)、VRを使った新スポーツ開発プロジェクト"WARPBALL"(SoftBank)、食をデータ化して転送する食革命プロジェクト"OPEN MEALS"など。Space food X(宇宙食市場コンソーシアム)コアメンバー、電通食ラボ兼務。グッドデザイン金賞、D&ADほか受賞多数。

戦略をビジュアライズする「デザインストラジスト」

──2015年に東京都が発行した『東京防災』のディレクションをきっかけに、「デザインストラジスト」と名乗るようになりましたね。

コピーライターと一緒によりよい広告表現を目指すことを"クリエイティブデレクション1.0"と定義すれば、平成になって増えてきた統合型キャンペーンの仕掛けや新しいブランドエクスペリエンスを作る仕事は"クリエイティブデレクション2.0"と言えるでしょう。僕も入社10年目くらいまで夢中でそのことに時間を費やしてきましたが、最終目標が「物を売るため」で終わっていいのか?という疑問が少しずつ膨らみ、よりよい未来を作るためにクリエイティブを生かしていきたいと思うようになりました。

そんなとき、『東京防災』の話を知り、コンペに参加したんです。阪神淡路大震災を経験していることもあり、デザインの力で人の命を救うという社会的意義の高いプロジェクトに興味が湧きました。また、アートディレクターとしても、行政の配布チラシやポスターが都民に関心を持ってもらえるコミュニケーションデザインになっておらず、適確な情報を必要な人に最短距離で伝えられていないという課題を感じていたので、いつも以上に気合いが入りましたね。

この仕事では、プロジェクトを進める過程でアートディレクターのビジュアライズする力を実感できたのが最大の成果でした。僕が最初に提出したカンプと最終的なアウトプットに大きな違いがなかったのは、最終ゴールがどうなるのかというオーソライズがビジュアライズによってできていたからだと自負しています。行政のような縦割り組織が相手でも、担当者ごとに解釈のズレが生じることなく決裁権者まで伝えられたのだな、と。

そこで、クライアントに「なぜ?」を考えてもらえるよう戦略をビジュアライズする職種として、「デザインストラジスト」と名乗るようになりました。『東京防災』を例にすると、本のデザインはもちろん、告知のイメージ、配布後に世の中がどういうふうになるかといったことまでストーリー化してビジュアルに落とし込みました。

また、表紙の色柄ひとつとっても、「黄と黒の縞模様はエマージェンシーの国際的な標準規格であり、視認性も高い」といった必然性を明文化しました。そうして「なぜ?」を伝える戦略を自分で書くようになり、プレゼンのやり方を変えたことで、商談の相手が決裁権者層へと近づいてきたんです。榊というアートディレクターは、自分の好きなことをデザインしたいわけではなく、世の中や商品をどう動かすか、ブランド価値をどう上げるかを戦略的に考え、そこにデザインを紐づけて考える人間だと信用してもらえるようになった。それからですね、デザインストラテジストと名乗るようになったのは …

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