お寺にお供えされるさまざまな「おそなえ」を、仏さまからの「おさがり」としてちょうだいし、支援団体の協力の下、経済的に困難な状況にある家庭へ「おすそわけ」する。こんなシンプルな仕組みで子どもの貧困問題に取り組んでいるのが、NPO法人「おてらおやつクラブ」だ。活動開始から4年を経た2018年、グッドデザイン賞大賞を受賞した。
「おそなえもの」を「おすそわけ」する
この活動は、5年前に大阪で起きた母子の餓死事件を契機に始まった。自身も3人の子どもを持つ、奈良県田原本町安養寺の住職・松島靖朗さんは、この事件に心を痛め、自身が取り組めることを考えたという。その中で着目したのが、お寺に日々お供えされる「おそなえもの」だ。お菓子、果物、食品や日用品などの「おそなえもの」を「おさがり」として、生活に困っている家庭に「おすそわけ」する。これは慈善活動でもなく、社会貢献活動でもなく、日本全国の寺、地域の人々が信仰を持って続けてきた活動である。
「おてらおやつクラブはいまの時代に合わせて新しい知識、新しいものを用意して活動するものではありません。全国の寺、地域の人々が信仰を持ってやってきた習慣を多くの人たちの力を合わせてつなげる、お寺の"ある"と社会の"ない"をつなげることで社会問題を解決していく活動です」と、松島さんは話す。
「おてらおやつクラブ」の特徴は、お寺本来の活動であることに加え、お供えをする人、お寺、そして支援団体の誰もが参加しやすい仕組みにある。具体的には、お寺と子どもをサポートする全国の支援団体が「おてらおやつクラブ」に登録。お寺となるべく近い支援団体を同クラブがマッチングし、各寺に寄せられたおそなえものを、子ども食堂など支援団体を通して経済的に困窮状態にある家庭へと送るという流れだ。
送るおそなえものの量や発送ペースは各寺に任されており、一つの支援先に対して複数のお寺が支援。配送料のみ、お寺が負担する形になっている …