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デジタルと三次元の融合 新エクスペリエンス・デザインの台頭

楓セビル

ニューヨークSOHOにあるレベッカ・ミンコフのファッションストアは、テクノロジーを駆使したエクスペリエンス・デザインを提供して、顧客を歓迎している。

ニューヨークSOHOにあるレベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)のファッションストアに入ると、その正面には大きな鏡がある。客がその前に立つと、鏡がインタラクティブ・スクリーンに変わる。タッチスクリーンで、自分が興味を持つ商品を押す。そして、無料の冷たいソフトドリンクかシャンパンをオーダーする。オーダーには携帯電話の番号の入力が必要だ。その番号を通して、店のアソシエーツ(世話係)が、飲み物や試着室の空き状況などを連絡する。

試着室に入ると、そこにもインタラクティブの鏡がある。RFIDタグが、部屋に持ち込まれる衣類をトラッキング。そして、客が興味のある洋服のサイズや他のスタイルなどをタッチスクリーンで調べると、それにマッチするバッグやスカーフなどがスクリーンに現れる。客が2度目に来店した時には、その客の好きな色、オーダーした飲み物、サイズから好みのスタイル、支払い方法など、すべてのデータが保管されているため、客は一層シームレスな買い物を楽しめるのだ。この楽しさ、満足感を味わうために、客は何度もミンコフの店を訪れるのだ。

消費者の期待感を満足させる

レベッカ・ミンコフの店は、いま米国で急速に台頭している"エクスペリエンス・デザイン"というトレンドの一例である。最近米国西海岸に登場したナイキ・メルローズ・ストア、アマゾン・ゴーなど、多くの小売店がこれに似たハイテック・デバイスで顧客誘致を試みている。

それがオンラインであれ、実際のリテールストアであれ、「ブランドと消費者とのタッチポイントが気持ちのいい、ポジティブな、楽しいものであれば、ブランドと顧客との間に緊密なリレーションシップが生まれます。商品の特徴やメリットを広告するだけでよかった時代は終りました」と、総合コンサルティング会社 アクセンチュアのデザイン部門 Fjord社のVP Martha Cottonは言う。

もっとも、エクスペリエンス・デザイン、またはUXと呼ばれる消費者とブランドとの接点で発生する体験、経験を向上させるためのデザインは、今に始まったことではない。「その性格が変わってきているのです」とCotton。最初の頃は、使い勝手のよい商品やサービスをデザインすることがエクスペリエンス・デザインの主眼であった。例えば、分厚い説明書を読まなくても、商品を見ただけで容易に使用方法がわかる、または何度使っても間違いなく機能するグッドデザインの商品を作ることが、エクスペリエンス・デザインであった。

だが、テクノロジーの革新につれて、エクスペリエンス・デザインのコンセプトも、ただ"使いやすい商品"という域から飛び出した。

「テクノロジーの台頭で、人々の生活、仕事、遊びが急速に変わってきている。アマゾンやザッポスのようなシームレスなオンライン・ショッピングの体験が、人々のブランドに対する期待、求めるものを大きく変えた。消費者の拡張した期待感(エクスペクテーション)を満足させるために、シンプルでエレガントな解決法を考え出すこと。いまではそれがデザイナーの仕事です」とCotton。そして、Fjordが手がけた「ジョイ・アルバム」はその好例だという。

万人写真家時代になり、人々はあらゆる機器を使って写真を撮る。だが、そんな時、撮った写真が全部載っている昔ながらの写真アルバムを懐かしむ人は多い。デジタル・スタートアップJoyのCEO Alan Chanは、妻が災害で昔の写真集を焼失して嘆いているのを見て、「失うことのない写真集」のデザインをFjordに依頼。Fjordは、テクノロジストと共に、スマートフォトアルバム「ジョイ・アルバム」を開発した。このアルバムはiPad大で、手に持つと、ちょうど昔の写真アルバムのような感触と重さがある。

携帯電話やDropbox、Facebook、フリッカーなど、さまざまな場所に散らばっている写真を一箇所に集め、好きな時に眺めたり、家族や友人と楽しんだりできるデバイスだ。アルバムは、三次元のものと同じように、指でページをめくって眺める。アルバムを立てかけてスイッチをオンにしておくと、持ち主が好きな写真やVimeoが自動的に登場する …

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