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米国広告界に訪れたブランド・アクティビズム時代

楓セビル

報道写真を活用した、『The New York Times』紙の2017年のキャンペーン「The Truth is hard to find」。

つい数年前まで、効果的な広告には人の心を騒がせる政治の話も、米国社会に渦巻いている、さまざまな不合理、不純、人種差別、移民問題などといったテーマが姿を見せないのが常道であった。"よい"広告のルールは、"ノー・ポリティクス"(政治色なし)だったのだ。ところが、この1、2年の間に、この傾向ががらりと変わった。皮切りは2018年のスーパーボウルであった。

政治色が皆無だったスーパーボウルに、移民問題からレイシズム(人種偏見)、環境問題などをメッセージするCMが登場したのだ。これまでにも、いわゆる"グッドバタイジング"と呼ばれる穏便なポリティカル広告はあったが、それは一挙に"ブランド・アクティビズム"、または"ソーシャル・インパクト"とも呼ばれる広告に変わった。

ブランド・アクティビズム広告の台頭

2017年、トランプが米国大統領に就任して以来、米国市民はレフト(左翼)とライト(右翼)に二分化し、すべてのことに政治的なニュアンスが加わるようになった。ソーシャル・メディアには、トランプの言うフェイクニュースや否定的、虚偽的なストーリーが満ちあふれ、Twitterはその時の気分や状況の中での皮相的な政治についての意見やコメントを述べる場となった。こんな社会環境の中で、自分たちの立場を明確にし、社会的問題に対する意見を述べることで、少なくともどちらかの側の消費者の心を掴もうと努力をするブランドや会社が増えた。

オンラインニュースメディア『ClickZ』によると、"ブランド・アクティビズム"には2つのタイプがあるという。1つは、大きな社会問題に関心を持たせるためのアクティビズム、もう1つは自分、または自社の意見を述べるために社会問題を取り上げるものだ。最初のカテゴリーは、必ずしもビジネスに繋がるものではないが、会社と社会問題とを関連づけることで、消費者に自社の理念を伝えられるメリットがある。

もう一つも同様に社会問題を取り上げてはいるが、こちらの方は、消費者がネガティブな反応を示す可能性もある。例えば特定の企業やブランドが移民問題、レイシズムなどに強い関心を持っていることを披露するために、こうした問題を広告やマーケティングに織り交ぜて商品を売る。

最近の消費者は、会社やブランドが、単なる方便で社会問題を取り上げているのか、それとも本当にその問題に取り組んでいるのかを見抜く知恵と情報を持ち合わせている。それが販売促進のための方便であるとわかった場合、消費者からのリアクション(反動)は強い。

例えばペプシがモデルケンダル・ジェンナーを起用したCM「Live For Now Moments Anthem」は、放送と同時に、重大な社会問題を軽々しく扱っていると多くの視聴者から強い反発を受けた。その結果、わずか1日でCMのオンエアを止める結果になった。「ユニティ、ピース、理解…。そういうことを伝えたかった。が、それに失敗した。謝る」と、ペプシのスポークスマンは、『Ad Age』誌を通して謝罪している。

こんな失敗はあるが、ブランド・アクティビズムで成功する時、それがブランドに与えるポジティブな影響は大きく、強い。例えば、LGBTの人たちの結婚が普通の結婚と同じように受け入れられるべきだという主張をテーマにしたオーストラリアのAirbnbのCM「Until We All Belong」(すべての人がそうなるまでは)はその好例だろう。

オーストラリアは、西欧社会の中で同性婚を認めない最後の国だ。Airbnbはこの偏見をなくすために、"Until We All Belong"という言葉を彫った結婚指輪を作った。が、指輪の真ん中には隙間が開いている。その隙間は、LGBTの人たちがいまだにヘトロセクシュアル(異性愛)の人たちと同じように結婚指輪をはめることができない事実を語るもので、普通の結婚指輪のように亀裂のない輪になるまではこの運動を続けようという意志を示している。

この指輪は、eBayを通してLGBTグループだけでなく、この運動をサポートするすべての人に無料で提供された。Airbnbは、広範囲にわたる社会問題に取り組むことで、企業の姿勢を実証したのである …

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