電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。このコーナーではさまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛けあわせることで、触って感じる新しいブックジャケットを提案していく。
ブックジャケットに瞬く大小の星
四角く切り取られた枠の中に見えるのは、黒い宇宙の空間と、そこに瞬く大小の星たち。今回使われた紙は、玉模様が散りばめられた特徴的なファインペーパー「玉しき」だ。ブックジャケットをデザインするにあたり、「普段柄の入った紙を使う機会があまりなかったので、実はかなり悩みました」とドラフトのアートディレクター 福澤卓馬さんは明かす。
そんな中、玉しきの模様をじっと眺めていると、この紙の中に無限に広がる空間が見えてきたという。さらに、仕事を通じて得た家紋の知識が企画のヒントになった。「家紋では、円は星紋、すなわち星を表します。ここから、玉しきの玉模様を宇宙の星と見立て、紙の中に見えてきた空間に大小さまざまな星を散りばめ、宇宙を描こうと思ったんです」。
今回の紙のテーマに合わせて和の画材=墨をチョイスし、ドリッピング(吹き流し絵)という技法で描いている。墨を含んだ筆で色々なものを叩いて、大小さまざまな点(星)を生み出した。加工の段階で、白箔と白のオペークインキの2種類の星を作ることで濃度差を出し、そこから生まれるレイヤー感で空間の奥行きを強調した。さらにいくつかの星には、瞬きを表現するためにホログラム箔を使った。
こうした宇宙の表現によって、「本の世界が持つ無限の広がりを、外側から感じられるものになれば」という。普段から福澤さんは、植物の本から量子力学の本までさまざまなジャンルの本を横断的に読む。「本は発想の元です。読むことで世界が広がる面白さをこれまで実感してきました。全く関係がないと思っていた本が、なぜかCMの企画に結びついたこともあります。そんな本の宇宙が持つワクワク感を、見た人にも楽しんでもらえたらと思います」。
今月使った紙:玉しき
散りばめられた玉模様の透かしが美しい和様のファインペーパー「玉しき」が生まれ変わりました。薄物・厚物には玄(くろ)、紅(くれない)など陰陽五行からイメージされた新色が加わり、和の印象を際立たせます。