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CAC60周年記念企画

どんなときもワンキャッチ、ワンビジュアル

一倉 宏/聞き手:波間知良子

時代が変わっても変わらない広告コピーの本質や作法はどんなところにあるのか。第二回目は、一倉宏さんに波間知良子さんが話を聞きました。

愛に雪、恋を白。

(東日本旅客鉄道/1999年)

きれいなおねえさんは、好きですか。

(松下電工/1993年)

うまいんだな、これがっ。

(サントリー/1993年)

愛のあかしに、ベビーをあげる。

(サントリー/1982年)

コピーを書く前にイメージする

波間:一倉さんは以前に「コピーをつくるときは、最初にイメージを掴む」とお話しされていましたが、具体的にはどのようなことをイメージしているんでしょうか。

一倉:スポーツ選手が行うイメージトレーニングに近いかもしれない。スケートの選手が飛びたいジャンプをイメージするような感じでしょうか。コピーライターもいきなり書きはじめるのではなくて、先に「何を書いたら成功なのか」のイメージを持つ必要があります。そこがきちんとできれば、あとは定着すればいい。数をたくさん書くことよりも、まずはこの作業が大事だと思っています。

波間:私も最近は時代背景や自分の経験との接点をふまえて、イメージを持つことが大事だと何となく思いはじめたところです。そうすると、一倉さんのおっしゃるイメージとは、言葉ではなく映像で考えるということでしょうか?

一倉:言葉が出たら、コピーライターの仕事としては終わりだから、言葉ではありません。JR SKISKIのコピー「愛に雪、恋を白。」は、スキーと恋がテーマ。すぐにあの時代のスキー場を思い浮かべました。音楽が流れて、男と女がゲレンデで出会って恋をするというイメージ。そんなストーリーですね。それを照れずに真ん中に押し出そうと決めたので、後はそれほど悩みませんでした。

波間:イメージはコピーのためだけではなく、アートディレクターと共有して広告全体をつくっていくためのものでもありますか?

一倉:両方ありますね。僕らの世代は、デザイナーとコピーライターの2人で広告をつくっていました。副田高行さんや葛西薫さんとは漠然としたイメージを話して共有した後にそれぞれで考え、僕が先にコピーを出す場合もあるし、先にできたグラフィックにコピーをつけてと言われる場合もありました。どちらにしろ、広告の基本は今も変わらず「ワンキャッチ、ワンビジュアル」だと考えています。

波間:パナソニックの広告「きれいなおねえさんは、好きですか。」はいまでも多くの人が憶えているコピーです。

一倉:これはCMの企画からスタートしました。演出家の今村直樹さんと「美容商品は恋愛がらみで男性目線のものが多いけど、それではつまらない。弟目線でやろう」と話をして"おねえさん"という言葉が生まれたんです。女性は脱毛しているところを彼氏には見せないけれど、弟の前では平気な人っていますしね(笑)。

波間:サントリーモルツの「うまいんだな、これがっ」は佐藤雅彦さんとの仕事ですね ...

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