THE ONE SHOW2016レポート
カンヌライオンズ、クリオ賞と並ぶ、世界三大広告賞の一つ、THE ONE SHOW。『ブレーン』は今年、THE ONE SHOWとメディアパートナーを提携したことを機にニューヨークで取材を敢行しました。同賞のクリエイティブボードメンバーであるPARTY 伊藤直樹さんとともに審査員、そしてボードメンバーを訪問。いま彼らがどんなことを考え、新たなるクリエイティビティを生み出しているのか。その組織のあり方とともに考えます。
THE ONE SHOW 2016 レポート
今年2月、AKQAチーフ・クリエイティブ・オフィサーだったイナモト・レイさんが独立。新たにINAMOTO&Co.を設立した。今回、この秋に移転するブルックリン ゴワナス地区の新オフィスとなる場所でレイさんにインタビュー。設立から約半年を経て、いまINAMOTO&Co.はどのような会社になろうとしているのか。PARTY伊藤直樹さんも参加してもらい、一緒に話を聞いた。
NYブルックリン ゴワナス地区で現在、リノベーション中の新オフィス。この地区には映像スタジオなどが集まってきており、レイさんいわく「Williamsburgの次はここ」とのこと。
PHOTO:GION
イナモト▶ 僕たちの会社は、ビジネスインベンションスタジオを標榜しています。デザインとデータとテクノロジーの融合で、新しいソリューションを生み出す。簡単に言えば、新しいビジネスを開発するスタジオです。前職で同僚だったレム・レイノルズがパートナーで、まずは2人で会社を興しました。その後、R/GAからテクノロジー専門のウィル・ターネイジ、コロンビア大学でエンジニアリングを勉強していたナタリー・トレースの2人をリクルートし、デザイン、データ、テクノロジーの専門家にストラテジストを加えたスタジオになっています。
僕らのビジネスには、2つの柱があります。ひとつはクライアントに新しいソリューションを提供していく仕事。具体的に「これをつくってほしい」というよりも、現状は「何をしたらよいか、わからない」というお話がほとんどです。そこから戦略を考え、具体的なソリューションへと落とし込んでいく。そのプロセスにおいて、データに答えを求めるのではなく、問題設定にデータを使いたいと考えています。何に力を注ぐのが最も決定的なのか、データで問題を発見し、定めていく。その問題を解決する新たな方法を導くのが、デザインとテクノロジーという考えです。
見え方としては、コンサルティングに近いかもしれませんが、そこにしっかりとデザインを結びつけています。戦略だけ立てて終わるのではなく、その先のアウトプットの表現や形、あるいはサービスにまできちんと落としこんでいます。
そもそもなぜ僕がこのような会社をつくろうと思ったのか。インスピレーションの素は、スペインのレストラン「エル・ブリ」です。すでに有名なレストランですが、その仕事の形態に興味を持ちました。彼らはレストランでありながら …