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楓セビルのアメリカンクリエイティビティ NOW!

優れたアルコール広告に見る 4つのトレンド

楓セビル

01 タルモア・デュー・アイリッシュウィスキーの「Parting Glass」。は、本物のアイリッシュネスを表現したことで知られるCM。4人の男性の友情をフィーチャーし、一人が結婚して行くことでこれまでの4人組の楽しさが消えて行くことを憂いたもの。制作は、ニューヨークのブティック、オッパーマン&ワイス。



米国のケーブルテレビ局AMCのヒット番組「マッド・メン」が、この4月でシリーズの最終回を迎えた。4年間にわたってヒットし続けたこの番組は、そのタイトルが示すように、1960年代のマディソン・アベニューに働いたアドマンたちの生活を描いたものだ。当時、マディソン・アベニューに働くアドマンたちは「マッド・マン」というニックネームで呼ばれ、一種独特のサブ・カルチャーの中で生きていた。アルコール、煙草、セックス、不倫、ワンナイトスタンド…。とくにアルコールは、日中からマッド・マンの生活に欠かせないもので、広告主を招待した豪華なランチでの“マティーニ三杯”は、通常のこととなっていたようだ。「会社に帰った時、アルコールの匂いがしないように」と、ジンではなく、匂いのないウォッカをベースにしたマティーニを飲んでいたという話も伝わっている。

米国人とアルコール

1960年代、クリエイティブ革命の最中にあった米国広告界は、あらゆる意味でゴールデン・エージを迎えていた。そして、マッド・マンが愛用したアルコールも、同じようにゴーデン・エージにあったと言っても過言ではないだろう。今年の初頭、テキサス大学が1971年から2011年までの米国人のアルコール消費量と広告の関係をリサーチしたところ、米国人のアルコール消費量は1971年と現在とでは、ほとんど変わっていない。それにもかかわらず、米国のアルコール業界が使う広告費は、この期間に400%へと増加。「この調査を見る限り、広告と売上の間にはほとんど何の関係もない、またあっても非常に弱い関係しかないと言える」と、レポートは報告している。そして、「広告が消費者のアルコール消費量に何のインパクトも与えないという事実がある一方、消費者のブランド選択に関しては、かなりの効果があることは間違いない」と言う。インパクトのある広告を見た後、特定のブランドのアルコール飲料を多量に買い込む消費者もいるだろう。だが「それによって、彼、または彼女のアルコール消費量が増えることはない」とつけ加えている。

影響力を持つアルコール広告の特徴

消費量を上げる代わりに、ブランドチョイスを変えさせることのできる“強力な”アルコール広告とはどのようなものか?法的規制のある煙草、薬品、金融サービス、アルコールなどの広告、マーケティングを専門としているデジタルニュース「K-Message」によると、消費者の心をつかまえる魅力的なアルコール広告には、以下の4つのトレンドがあると言う。

1. ストーリーテリング(storytelling)

強いインパクトを持つアルコールの広告の多くは、長い、複雑なストーリーを語っているケースが多い。2014年、ニューヨークのブティック代理店“オッパーマン・ワイス”(以下OW)がタラモア・デュー・アイリッシュウィスキーのために制作した「惜別の杯」(Parting Glass)(01)は、その好例だ。

4人の正装した若者が、雨のそぼ降るアイルランドの田舎道を歩いてくる。間もなく小さな石のチャペルにたどり着く。4人は、墓地に面したチャペルの前の石垣に腰掛ける。誰からともなく、アイルランドの古いフォークソング「惜別の乾杯」が口ずさまれる。持って来たウィスキーをめいめいのグラスに注ぎ …

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