カロリーメイトやカップヌードルなど、メジャーな商品のテレビCMを多く手がけている福部明浩さんは、いま、マス広告をしっかりと担える数少ない30代のCDの一人だ。マス広告を制作する面白さを語る一方で、コンサルティング会社と業務提携するという先駆的な取り組みも行う。新たな境地を開拓するCDの活動に迫る。
福部明浩(ふくべ・あきひろ)
1976年生まれ。98年博報堂入社、コピーライターに。2013年にcatch設立。最近の主な仕事に、大塚製薬 カロリーメイト、日清食品 カップヌードル、クラシエ HIMAWARI、サントリー The O.N.E、エドウィン 男と女のジャージーズなどのテレビCMがある。広告のほか、『いちにちおもちゃ』『いちにちどうぶつ』(PHP)など絵本の執筆も多数。catchでは事業経営とコンサルティングのリヴァンプと業務提携も行っている。
クライアントのDNAから
まっすぐつながる企画を
――CDの役割をどうとらえていますか?
僕の仕事の原点はZ会の新聞広告だったので、今も自分がCD兼コピーライターでADと2人でやるのが基本スタイルです。2人だと、どっちが欠けてもダメで、お互い逃げられないのがいいんです(笑)。
クライアントとは、直接対面して仕事ができる状態でいたいです。というのも、クライアントと企画者の間に、誰かCDが入ると、大抵ブレが生じてしまう。だったら、企画者自身がCDになるのが一番いい。そのフィールドを確保するために、僕はCDをやっているようなものです。だから自分でプレゼンするし、企画書も書く。ある意味、CDをクライアントのためにある職種、ととらえているかもしれません。
本当は、純粋な「CD」という職能もあると思うんです。現場のクリエイターに絶妙な問いを投げかけ、上がってくる案を正確にジャッジする…というような。でも、僕がその境地にたどり着くのはまだまだ先ですね。それよりも、今は自分たちで案を作っている方が断然楽しいです。
――カロリーメイトやカップヌードルなどの話題性の高い仕事に、
何か共通する方法論はありますか?
一つは、クライアントからの風圧を一番受ける場所に自分を置くことです。アイデアって、締切などの圧力がないと生まれないものだから。ただし、自分以外のCDの設定した圧力だと、プレゼンがゴールになってしまいそうで。その点、クライアントからの圧力なら、広告を世の中に出して、結果を出すことがゴールになりますから。
それから、いい仕事は“いい連鎖”から生まれると思っています。「あの仕事をした人だから」と信頼されたり、仕事が仕事を呼ぶということがある。クライアントだけでなく、対スタッフにも言えることです。僕は企画をするときに、スタッフがやる気になって盛り上がることをしたいんです。「内輪受け」と言うけれど、内輪が盛り上がらないものに、外が盛り上がるはずがない。いつも大変な思いをしている制作会社の若いスタッフたちに、「この仕事は面白い」と思ってもらいたい。以前、箭内道彦さんが、すべての仕事は思い出づくりと言っていて、自分でも座右の銘にしています。皆の思い出にするぞ、という気持ちで取り組めば、一つひとつの仕事を楽しくする意識も生まれます。
そして最終的には、クライアントがその内輪の中に入ってくる状況をつくれると、とてもいい。クライアントがわっと乗ってきた時のパワーって、すごいですから。特に、テレビCMを打てるくらいの大きな会社が ...