言葉よりも直感的に理解でき、エモーショナルに気分を伝えられるビジュアルコミュニケーションの領域が盛り上がりを見せている。気軽に動画をアップロードし、シェアし、写真やスタンプを送り合う。好きな人のInstagramをフォローし、その人のセンスや美意識に触れ、共感し、憧れる。何かを説明するとき、時に言葉を介さない方が早く、ダイレクトに、細やかにつながれることがある。最近は、ソーシャルメディアに投稿された動画やビジュアルがトレンドの発信源となることも珍しくなくなってきた。こうした現象に注目し、企業による活用も進んでいる。さらに、ビジュアルは世界の共通言語でもある。軽やかに国境も越えられるビジュアルコミュニケーションは、グローバルに情報を発信したい企業の手段としても重要性を増していくだろう。ビジュアルコミュニケーションは、これから私たちのコミュニケーションや広告コミュニケーションをどう変えていくのか。
今回の青山デザイン会議では、レディー・ガガの専属シューズデザイナーとして知られる舘鼻則孝さん、ストリートスタイルフォトグラファーのシトウレイさん、写真を使った新しいコミュニケーションアプリ「Picsee」を開発したドミニク・チェンさんの3名に、その可能性とこれからの姿をお話しいただく。
現代の日本を世界に発信する
シトウ 東京の路上でストリートスナップを撮り、世界に発信するブログ「Style from Tokyo」を2008年にはじめました。元々ファッション好きでしたが、原宿のスナップショットとして世界からフォーカスされるのが、クレイジーで奇抜なファッションばかりなのが納得行かなくて。キャッチーなものばかりではなく、本当にスタイリッシュな人もいるんだよと伝えたくて始めました。さらに、こんな面白い仕事をしている人だとか、一風変わったファッションの男の子が「これからおばあちゃんの家の電球を取り替えにいくんだよ」と見た目とは裏腹におばあちゃん思いの人らしいとか(笑)、人柄の伝わるようなエピソードを言葉で補っています。自己表現というより、ブログという媒体での、ストリートスタイルに特化したジャーナリズムというつもりでやっています。Instagramもありますが、こちらはもう少しプライベートな位置付けのメディアです。
舘鼻 レディー・ガガの履いている「ヒールレスシューズ」のデザイナーとして知られていますが、ファッションデザイナーというよりアーティストという意識で活動をしています。自分の作品は、過去から現代へと続いている日本文化の延長線上にあるものです。日常的に着物ではなく洋服を着るようになった現代の日本において、日本のハイエンドなファッションの革新が止まってしまったような気がしたので、僕は日本の伝統からまっすぐレールを現代に引き、最先端の日本のファッションとして提示したんです。だから自分の作品が美術館に収蔵されるときは、刀や鎧や着物の横に置かれることになる。現代の日本を東京から発信している、という意味ではシトウさんとも近いですね。
ドミニク レディー・ガガはどんな経緯で舘鼻さんの靴を履くことになったんですか?
舘鼻 あの靴は、東京芸大の卒業制作だったんです。卒業直後の3月に、写真を自分でレディー・ガガのスタイリストに送ったんですよ。Webサイトのメールフォームから。ちょうどガガの来日が4月に決まっていたこともあり、すぐに色違いのオーダーがあって、以来彼女の専属シューズデザイナーをしています。仕事をはじめたばかりのころは英語がまるでできなかったのですが、それがよかったといまは思っています。
ドミニク 詳しい説明なしに、いきなり写真を送ったということですか?
舘鼻 そうです。実は僕はレディー・ガガの音楽も聴いたことがなかったんです。ただ、直感的に …
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