今月のこのコラムのテーマは、残念ながら、最近行われた第49回スーパーボウルのCMの話ではない。今年のスーパーボウルCMには、特殊な、面白いアプローチのものが多かったし、ゲームそのものの異様な終わり方にも、テレビ、コンピュータ、スマホ、タブロイドなど、さまざまなスクリーンの前で観戦していた視聴者を興奮させるものがあった。久しぶりに面白かったスーパーボウルに関しては、次回のコラムで。今回はそれよりもっと地味な、テレビ、新聞、雑誌、ラジオといった伝統的なメディアや、時代の主役デジタルメディアの影で、ひっそりと、しかしじわじわと実力を上げているもう一つのメディア、OOH(アウト・オブ・ホーム)の話をしたい。最近、この古い、そして同時に新しいメディアにも、スーパーボウルのCMに負けない面白く、イノベーティブな秀作が多く台頭してきているからだ。

01 タイムズスクエアに現れた、アパレルメーカー オールドネイビーのOOH。
5メートル四方の中に1000個の風船が取りつけられている。消費者がセルフィーをTwitterで投稿すると、風船が膨らんだり縮んだりして、その人のポートレートを描き上げる。同社の20周年を祝ったキャンペーンで、名前は「セルフィーブレーション」。
OOHが台頭、テクノロジーが媒介役
OOHは伝統的なメディア(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の中で、最も古いメディアである。その古さも手伝ってか、他のメディアと比べて、イメージ面で割を食ってきた。「看板屋」「ネオン屋」「シェルター広告屋」(バスや電車などの広告)といった名前で呼ばれ、あまりぱっとした存在ではなかった。「マルチメディア・キャンペーンでも、OOHの話は最後に出てくる。ちょっとした継子扱いだった」と、広告業界で数十年活躍しているクック&ワックス広告会社の創設者スティーブ・ワックスは言う。
ところが、ここ数年の間に、OOHのイメージも、また内容も大きく変わってきた。媒介となったのはテクノロジーである。テクノロジーは、二次元だったOOHの世界を三次元、またはインタラクティブにしたばかりでなく、音、動き、カラーをつけ加えた。「いまやOOHはメディアの中で最もカラフルで、消費者のアイボール(目線)を最もひきつけるメディアになっている」と、OOHの総元締である全米屋外広告協会(OAAA)のチーフ・マーケティング・ディレクター、スティーブン・フレイタスは言う。
OOHが台頭したもう一つの要因は …