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楓セビルのアメリカンクリエイティビティ NOW!

スター・スポーツ選手広告の功罪

楓セビル

01 「ヤンキーズのキャプテンで、米国野球の模範的なプレーヤーであったデレク・ジーターの引退は、米国野球界とそのファンにとっては大きな出来事であった。ゲータレードは、その大衆の気持ちを察して、ちょっとセンチメンタルだが心を打つこのCMを制作。シナトラの「I did my way」が印象的だ。
広告代理店はTBWA\CHIAT\DAY。

スポーツ、花盛り

これほどスポーツが盛んな時があっただろうかと思うほど、アメリカはスポーツが満開だ。例えば、昨年までテレビのフットボール番組といえば月曜の夜の「マンデーナイト・フットボール」だけであった。が、最近では「サースデーナイト」、「サンデーナイト」と、二つもフットボールの中継番組が加わった。加えて、バスケットボール、アイスホッケー、ゴルフはいまだにシーズンだし、まもなくスキーやアイススケートがこのスポーツ・オンパレードに加わる。アメリカを取り巻いているこのスポーツ熱は、ただ事ではない感じさえする。

ミレニュアルとスポーツ

このスポーツ熱は、ミレニュアル(17才~34才の団塊)がアメリカのマーケットの主役になったことが大きな要因の一つだと言われている。彼らの健康意識、スポーツマンシップ崇拝、美しい肉体への憧れなどが、このブームに拍車をかけている。調査会社ULI(アーバン・ランド協会)が行なった調査によると、ミレニュアルの男性の4人の一人は、自由時間をスポーツジム、エクササイズ、インドアスポーツに費やしていると報告している。

ミレニュアルのもう一つの特徴は、“セレブリティ”指向が強いことだ。映画スター、歌手、スポーツ選手、YouTubeスターからブログスターまで、あらゆる有名人を好み、愛し、崇拝し、フォローする。とくに、スポーツ選手には先に上げたような彼らの理想と信念に共通するイメージや属性があるため、ミレニュアル世代に強い影響力を持っている。そのため、スポーツ選手をスポークスマンとしている広告やマーケティングは、売上と直結するという数字もある。ハーバード大学がバークレーズ・キャピタル(金融企業)と共同で行なった調査によると、有名なスポーツ選手をスポークスマンとして使った商品広告は、売上を4%上げると報告している。ある場合には、爆発的な売上を上げることもある。例えば1998年、全く無名だった「ブリーズライト」という鼻呼吸を助けるテープは、当時、サンフランシスコ49erの人気選手ジェリー・ライスを広告に使うことで、ヒット商品になった。「ブリーズライト」は、鼻の上に貼り、鼻孔を広げるテープで、それにより呼吸が容易になるという商品。

スポーツ選手が話題のCM

こういった背景の中で、アメリカでは、新しいスポーツ選手の広告がほとんど毎日、誕生している。無数に近い数の広告の中で、他を抜きん出るためには、これまでのように、ただスポーツ選手を登場させればいいといった単純な作品は姿を消している。中にはスーパーボールに登場するCM級のアイデア、ディレクション、制作の広告も多い。消費者は、スポーツ選手が広告の中でも試合の時と同じように、パワフルで、魅力的で、スーパーマンであって欲しいのだ。そこで、そういったアイデアも、制作も他より優れ、しかもマーケティング上の効果も実証されているCMをいくつか紹介してみたい。

01 デレク・ジーターの「我が道を歩いて」
広告主:ゲータレード



米国人にとって、2014年の最も大きなスポーツイベントは ...

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