ニューヨークの非営利団体「The One Club for Creativity」が主催する「2023 One Asia Creative Awards」が、2023年12月12日に発表となった。本賞は、アジア太平洋地域の優れた作品を表彰するアワードプログラムとして開催する広告賞。本記事では、最高賞であるBest of Showの他、上位作品から5件を紹介する。

The Government of Tuvalu「The First Digital Nation」
01「世界初のデジタル国家」計画で環境保護を訴える
Best of Discipline他:The Monkeys,
part of Accenture Song他

オセアニアに位置する9つの島からなる国家ツバル。最も高い地点でも海抜はわずか約5メートルで、将来地球温暖化が進むと、水没が危惧されている。「国家」であるためのひとつの条件が、一定の領土を持つこと。では、その全てが沈んでしまったら国はどうなるのか。
長年にわたり環境保護の必要性を訴えてきた同政府は、2022年11月に開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)に参加。サイモン・コフェ外務大臣はスピーチに代わり、世界初の「デジタル国家」計画に関する動画「The First Digital Nation」を放映した。
この計画ではまず、ツバルの中で最も小さいテ・アフアリク島をメタバース上に移した。ドローンの映像と地形データを基に、木々の一本一本、石の一つひとつ可能な限り再構築。そして文化遺産を保存する取り組みとして、写真や文書により、伝統的な歌や踊り、生活様式をデータベース化した。
多くのデジタルツインでは外観の再現に焦点が当てられてきたが、ここではより広い「これまでに蓄積された物語や経験」を重視した。「子どもや孫たちが、世界のどこにいても同じ経験ができるようにしたい」とコフェ氏は語る。
この他にもツバルで収集されたデータはすべて、メタバース上にアップロードされる。これにより気候変動が島に及ぼす影響を追跡し、将来の予測を立てられる。さらにこの先もし本当に国土が失われてしまっても、デジタルツインを保有していれば国土の再建に役立つ可能性があるというのだ。
しかし「この計画は“プランB”。実際にこの島を離れたいという住民はひとりもいない」とコフェ氏。この施策を通し、世界中に気候変動への問題意識を持ってほしいと強調する。2023年、カンヌライオンズを始め様々な国際賞を獲得した本施策。本アワードにおいても、最高賞のほかCreative Effectiveness部門、Public Relations部門で部門最高賞を獲得した。