
●著者/宇南山卓
●発行所/慶應義塾大学出版会
●価格/7480円(税込)
「消費」は、私たちが享受する経済的な豊かさそのものであり、経済活動の究極の目的である。例えば、消費税率引き上げによる消費の低下や高齢化による貯蓄率の低下など、経済現象の多くは、広い意味での“消費の決定”と密接に関係している。社会的にも政策的にも異なる文脈で語られ、無関係に思えるこれらの経済現象は“消費の決定”という視点で考えれば、共通した構造を持っているのだと著者は言う。
著者の宇南山卓氏は、「消費の決定構造を明らかにして、これらの経済現象を体系的に理解することができれば、現在の日本経済を理解する重要な一歩となる」と話す。
そのため、本書『現代日本の消費分析 ライフサイクル理論の現在地』は、現代日本の消費を分析することと、ライフサイクル理論の現在地を示すことを目的としている。「ライフサイクル理論」とは、個人の生涯を通じた消費にまつわる多様な現象を、一貫した視点で分析するために用いられている枠組みのこと。家計が自らの効用を最大にするように消費を決定しているとする考え方であり、現代マクロ経済学の最も重要な構成要素ともなっている。
第1部では、ライフサイクル理論が誕生した背景、理論の基本的な構造について論じる...
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