オンライン完結型のBtoC商材においては、従来のチャネルに比べ、より詳細な顧客データの収集が可能となる。このとき、果たしてどの数値をKPIとして設定すべきなのだろうか。D2Cブランドの運営経験を持ち、現在は企業のサポートを行う松下沙彩氏が解説する。
KPI設定の前に自分たちの顧客像を理解する
デジタルで顧客と直接のつながりを築ける時代において、顧客と顧客の行動を知り、顧客価値を実現し続けることを目指すのは、いまや全ての企業にとって同じです。
ただ、D2Cブランドとそれ以外の最も大きな差は、ひとりの顧客がブランドにもたらすインパクトの捉え方ではないでしょうか。何気なくサイトを覗いてくれた方、商品は買っていないけれどSNSだけフォローしてくれた方、ポップアップストアでつながってくれた方。出会い方は様々ですが、顧客とのつながりを最も大きな資産とするD2Cブランドにとって、せっかくつながってくれた縁はひとつたりとも無駄にできません。
そこでKPI設定の前に、まず自社にとっての顧客像を知る必要があります。ここで陥りがちなのが、顧客が言ったことを全て課題と受け止めて解決しようとしてしまう「顧客は神様」志向。これは、自分たちのブランドが実現したい顧客価値=軸がない場合に陥る罠です。その逆が、自分たちの計画どおりに顧客が動くと勘違いする「お客様はしもべ」志向。日常的に顧客を「囲い込む」、顧客に「買わせる」といった発言をしていたら要注意です。
D2Cブランドの顧客は、自分なりの判断基準を持ち、「自分がこのブランドの価値を発見した」という意識を持ってくれる傾向があります。彼らの想いを受け入れ、糧にし、共にブランドが掲げる価値を実現していこうと考えるのが「顧客は仲間」志向。私が所属する『顧客時間』では、顧客を「個客」と捉え、顧客基点のコミュニケーションを考えます。顧客が仲間だと思えば、自ずと一人ひとりの「個客」との対話を考えられるはずです。
「1回きりの買い物」であると考えると、青枠のフローで後半になればなるほど、ボリュームが少なくなり、KPIとして評価しづらくなってしまいます。そこで設定したのが、赤枠内の「間接的なモデル指標」です。