昨今、企業のマーケティング部門が担う領域は拡大。さらにデジタル化により、可視化されるデータの数は膨大になっている。デジタル時代のマーケターにはどのようなスキルが求められるのか。ディー・エヌ・エーでデジタルマーケティング領域を担い、現在は複数社のマーケティング支援も行っている今西陽介氏が解説する。
全てのデータが可視化されるので担当者は毎日数字と睨めっこ
マーケティング担当者の仕事は日々増え続けている。これが昨今の状況ではないでしょうか。事業会社のミッションとしては、戦略を策定し、実行フェーズになると複数のメディアやツールでの施策進行、クリエイティブ制作管理、施策終了後には振り返りを行い、次回の実行に生かす。いわゆる一連のPDCAサイクルをひたすら行っています。
さらにメディアも多様化し、SNSなどを使ってお客さまとともに価値を共創していくといった施策も増えています。メディアごと、施策ごとにKPIを緻密に管理していくとなると、作業に終わりはありません。
マーケティング・コミュニケーションの作業量の増え方は、コンビニ店員のそれと非常に似ている気がしています。近年では宅配物の発送などのサービスや、レジでの接客も決済方法が多岐にわたっており、覚えることが無数にあります。このように、新しく覚えることや運用しなければならないものが、今のマーケティング担当者は無数に増えており、KPI管理に時間が割かれています。
一昔前、KPIが今ほど可視化されていない時代では、複数メディアがあったとしても、入稿作業を終えたあとは、途中で現在ほど原稿差し替えをすることもほとんどなく、掲載が終了したら期間全体を見渡して、効果の有無や、もしくは出稿している時期、していない時期の比較をして、効果に一喜一憂していました。
今では施策のほとんどが可視化され、特にデジタル領域は全て数値が出るので、担当者は毎日、数字と睨めっこしているのがマーケター “あるある”です。ただ、その「効果を良くする」睨めっこの作業の大半が今ではAIが行うようになっており、人間は、AIが算出してきた数字に対して、どうするのか決断をする部分を担います。さらに今では、その決断の材料ですらAIがやってくれているので、我々はKPIの設計に向き合いながらも、仕事の成果を上げる方法、キャリアを積み上げていく方法に向き合わねばなりません。
マーケターに求められるのはKPI積み上げ以外の視点や能力
マーケティングの成果につながるKPI設定のポイントと言えば、商品種別を問わず、事業のグロースに寄与できるものをどれだけ細かく分解して、アクション単位に落とし込めるかが全てです。
例えば、一般的にマー…