顧客は多岐にわたるチャネルからサービスに関する情報にアクセスすることが可能になりました。このような変化の中で、企業はデータを使うことにより、見えなかった顧客の行動や態度変容を明らかにし、顧客を理解することが重要になっています。花王が昨年12月に立ち上げた生活者との双方向のデジタルプラットフォーム『My Kao』は、共通のOne-IDで各種会員サービスを展開、マーケティングの改革を推進しています。その狙いと取り組みを取材しました。
顧客接点をダイレクトに「モノをつくる」から「体験を創る」へ

花王は2022年12月、デジタルプラットフォーム『My Kao』を立ち上げた。プラットフォーム上では購買情報や体験情報が「My KaoID」というOne-IDで連携される。データは「くらしビッグデータ」として蓄積し、顧客をより深く理解することで、様々なUX(顧客体験)を提供するとともに、今後のモノづくりにも活かしていくことを目指す。また、美容領域については、『MyKao』内に、「Kao Beauty BrandsPlay Park」がある。ブランド横断コンテンツとブランドサイトで構成されている。
同社DX戦略部門事業DX推進センターカスタマーサクセス部部長・鈴木直樹氏は「『My Kao』は生活者と直接つながる双方向データプラットフォームをうたっています」と話す。
鈴木氏は導入の背景として4つのポイントを挙げた。①情報が氾濫し、情報の信頼性への不信が広がる昨今、企業が発信する情報への期待が大きくなってきていること。②IoT技術の進化により、あらゆるものがデータ化されていること。③生活者自身が作り手となり発信するプラットフォームなど、クリエイターエコノミーが急成長し、モノづくりの主体が生活者に移りつつあること。④花王が持つ、顧客接点の強みをさらに生かすこと。「生活者と世の中の変化を踏まえて、お客さまと対話し、多くのデータからお客さまを深く理解することで、一人ひとりの『Kirei-Life』を共創していきたいと考えています」(鈴木氏)。
また日用品から化粧品まで、扱う商品が豊富で、顧客との接点が多い一方で、「この商品は花王のブランドだよね」と理解して使われる機会が少ないと課題を感じていたという。『My Kao』を通して、花王ブランドのファンとなってもらいLTVの向上も目指す。「今まで以上に商品の先にいる一人ひとりのお客さまの毎日が豊かになることを目指し『モノをつくる』から『体験を創る』メーカーへと進化していきたいと考えています」(鈴木氏)。