出版・メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。本連載では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かしている方に、編集術に対する考えを聞きます。
竹村俊助が考える「編集」とは
☑誰かの“伝える”を“叶える”こと
☑伝えたいことと、聞きたいことをすり合わせること
☑「発信元」と「発信先」をよく知り、客観性を持つこと
マーケターは、
商品価値を伝える編集者である
世の中を構成する価値を生む人とそれを届ける人
世の中には、価値を生み出す人とその価値を誰かに届ける人が存在していると思っています。前者は作家や農家の方々など、いわゆる価値そのものを創出する人。そして後者は料理人といった、価値を加工して流通させる人のことです。編集者は後者の「価値を届ける人」に属します。
この両者の関係があって初めて、世の中に価値を広く伝えられるのだと考えたとき、編集者の仕事はコンテンツを通して、価値を生み出した人の「“伝える”を“叶える”」ことなのではないかと思うようになりました。
このように考えるようになった背景に、私の原体験があります。以前、ある経営者の方から「伝えたいことがあるのに、上手くまとめられないから力を貸してほしい」と相談をもらったことがありました。この場合、経営者は先述の「価値そのものを生み出した人」に。価値は、経営者が伝えたいことにあたります。
一般的にメディアの編集者は、取材対象者の思いを言語化したり、著者の思いをコンテンツとして出すことを仕事としていますし、そもそも「“伝える”を“叶える”」のが仕事の職業です。だから経営者の方も私に相談してくれたのだと思います。
そう聞くと、「“伝える”を“叶える”」のは、編集者ならではの仕事だと考える人もいるかもしれません。しかし、「“伝える”を“叶える”」という行動の前提にあることを理解すると、メディアの編集者だけの仕事に限らないことをわかってもらえると思います。ここでおさえておきたいのは、「“伝える”を“叶える”」は、単に誰かの代弁をするだけではないということです。
伝えたいことと読者のニーズをすり合わせられているか?
私が「“伝える”を“叶える”」際に大切にしているのは、伝えたいことと聞きたいことのすり合わせ。経営者の方からの相談を例にすると、経営者の伝えたいことを、読者の聞きたいに近づけることです。
価値を生む人が伝えたいことは、読者の聞きたいことと必ずしもイコールであるとは...