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クリエイター「私の編集術」

編集は3つの要素を基にして「何にもできない人が、何でもできる」こと。

菅付雅信氏(グーテンベルクオーケストラ)

出版・メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。本連載では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かしている方に、編集術に対する考えを聞きます。

    菅付雅信が考える「編集」とは

    ☑ ①企画を立て ②人を集め ③モノをつくること

編集は3つの要素を基にして「何にもできない人が、何でもできる」こと。

なぜ、編集と出版はイコールでつながってしまうのか

企画を立て、人を集め、モノをつくる。私は、この3つの要素が入っていれば、編集であると考えています。そうであるならば、編集は出版物に限ったものではなく、あらゆる場面で行われていると想像できるはずです。

ではそもそも、なぜ編集という言葉は出版物に結びつくようになったのか。それは、マスメディアの誕生に由来しています。

最初のマスメディアは、ヨハネス・グーテンベルクが15世紀に発明した活版印刷機による印刷物でした。その歴史から考えると、出版物の編集者は、最初のマスメディア・クリエイターであると考えることができるでしょう。

このように、編集の起源はとても古いため、「編集=出版物をつくること」と結びつけられてしまいがちです。しかし、編集とは本来、もっと幅広い物事に活用されています。昨今は、「タウン・エディター=街の編集者」といった肩書きも聞かれるようになりました。私自身も編集者という肩書を名乗りながら、出版物だけではなく、さまざまな企画に携わっています。

編集は誰かとの共同作業を前提としている仕事である

編集の定義がこの3つの要素であるという考えにたどり着いたのは、内外の横断的な編集の先人の存在でした。なかでもヨーロッパでは、編集者は尊敬されるクリエイティヴ・ディレクターとして、出版を超えた様々な領域で活躍しています。それらの様子を実際に見て、編集の本質は出版というアウトプットではなく、概念だと認識したのです。

そもそも編集とは、個人作業ではありません。ひとりで小説を書いたり、絵を描いたりすることとは違い、誰かとの共同作業が前提にあります。

出版物の制作を例に挙げると、まずは企画を立てることから始まります。その企画のもとに、編集者はアートディレクター、ライター、カメラマン、スタイリストなど、その道のプロを集めてくる。編集者は、デザインもできないし、ライターほど文章も上手くないし、写真も下手だし、スタイリングもヘアメイクもできない。しかし、各ジャンルの第一人者をキャスティングし、共同作業することで、何でもできる人でもある。

ゆえに、私は編集者を「何にもできない、何でもできる人」だと...

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