出版・メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。本連載では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かしている方に、編集術に対する考えを聞きます。
品田英雄が考える「編集」とは
☑「選択」と「表現」で構成されるもの
☑起源となるのは観察
☑観察から「誰かに教えてあげたい!」という気づきを見つける
☑仲間の力を借りて、ブラッシュアップするもの
編集の構成要素は「選択」と「表現」
そこに必要なのはセンスではなく「面白い」を共有する仲間の存在
編集というアクション そこにセンスは必要なのか
編集は、「選択」と「表現」の大きく2つで構成されるものだと考えています。「選択」とは文字通り、必要なモノ・コト・情報を選ぶこと。そして「表現」は、選んだものを面白くかつ、魅力的に伝えることです。
それだけ?と思った方もいると思いますし、そこにはセンスが求められるんでしょ?と疑問が出てくる人もいるでしょう。ここでは、編集の構成要素である「選択」と「表現」を要素分解して、編集力を身につけるためには何が必要なのか。私の経験を基に話していきます。
すべての起源は観察から 鍵は「両極端」と「動く・止まる」
まず、「選択」において重要なのは観察です。何かを見て、何でもよいから感じたことを集めてくる。心を揺さぶられたり、疑問に思ったり。「感じる」の指標は何でも構いませんが、軸にあるのは、誰かに話したくなること。「聞いて!こんなことがあった/思ったんだ!」ということを観察から見つけてくることです。
観察にもいろいろな方法がありますが、大事なのは観察対象の両極端を押さえることと、「動く・止まる・座る」ことです。これらは、かつて私がワークショップに通っていたカリスマバイヤーで元参議院議員の藤巻幸大氏がおっしゃっていたこと。自分自身の観察に強く影響を与えたもののひとつです。
両極端を押さえるとはどういうことか。それは、ある意味先進的でとがっている場所と保守的な場所を知るということ。いわゆる観察対象の両極端を押さえると、両者の差や中間地点、変化する地点がわかるようになるという観察方法です。
当時、藤巻氏はワークショップで「答えはストリートにある」と話していました。とにかく現場に足を運び、両極端の場所間を移動して観察する。人が着用している服やアイテムが場所の移動につれて変わっていく様子が見えてくるというわけです。
しかし、観察対象である「人」も移動しますし、同時に観察している自分自身も移動します。つまりそれって、観察対象と一緒に動いてしまっているから、見えているものは止まっているのと同じとも...