出版・メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。本連載では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かしている方に、編集術に対する考えを聞きます。
酒井新悟が考える「編集」とは
☑ある事柄について大枠から細部までを考えられる力
☑全体を見渡す鳥の目、再現性を考慮する虫の目を持つこと
マーケティング施策立案に「編集視点」が生きる理由とは?
ビジネスの課題は編集視点で見てみよう!
メディア運営やコンテンツ制作における「編集」能力が、あらゆるビジネスシーンに役立つのでないかと私は常に考えてきました。約20年前、ファッション誌の編集者としてキャリアをスタートし、新規メディアの立ち上げ、ECサイトのコンテンツ制作、コンテンツマーケティングなどの仕事を通じて実感をしてきました。ただ、成果を表しにくく説明し難いこの「編集力」。実はマーケティング、マネジメント、企画提案、文章作成など、媒体や企画を進める上での「総合力」として機能しています。
私は編集の骨格を、「ある事柄について大枠から細部までを考えられる力」だと捉えています。具体的には、「ゴール」を思い描くことができ、かつその「ゴール」を実現させるための「方法」を考えられる2つの視点を持てる力のことです。私はこの2つの視点を「編集視点」と呼んでいます。今回は、マーケティング領域で、どのように編集視点を活かせるか、話をしたいと思います。
均一なニーズではなく潜在的な価値を見つけよう!
昨今のマーケティングは、「効率よく露出し、たくさん売る」という市場や経済だけの側面ではなく、多様性をはじめ社会や文化、環境問題などとも向き合い、相容れない事柄を紡ぐ力が求められています。
特に、モノやサービスが溢れている時代に生まれたZ世代には、大声で語りかけるマスコミュニケーションは効果が弱まってきた感覚もありますよね。モノやサービスの質が均一的になってきていることにより、生活者のニーズを見出して訴求するのも難しくなってきました。
データ解析などの定量的な取り組みをベースにしつつも、ここは「編集視点」の出番です。
まずはメディアを構築していくうえでの制作過程とマーケティング施策の企画工程をクロスオーバーさせながら考えてみましょう。
マーケティング施策の企画立案は、「インサイトの発掘」→...