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社会学の視点

不思議の国の自動販売機

遠藤 薫氏(学習院大学)

自販機がもたらす魔術的思考と全能感

最近、高級肉や名店の手づくり餃子、ラーメンなど、これまでなかったような商品を販売する自動販売機が増えている。これら自販機はビルの片隅になんだか怪しげな感じで潜んでいたり、コインランドリーのような空間に無機質にずらりと並んでいたりする。人件費がかからない、年中無休で24時間営業できる、食品ロスが少ない、など売り手側のメリットはわかるけれど、買い手の心をつかまなければ売上は見込めない。

有名店の商品等は、意外と高価格なのに、なんだか雑な売り方に見えて、これで買う人いるのかしら、とちょっと心配に思っていた。ところがこれが結構人気で、市場は拡大しているらしい。なぜだろう?

実は私も、自販機には心がそそられる。数年前、新橋の路地裏の小さな駐車場で、あまり車も止まっていない場所に、ポツンと自動販売機が立っていた。何だろうと思って近づくと、高級そうな瓶入りだしつゆの販売機だった。なかなか高価で、あまりの違和感に思わず買ってしまった。おそるおそる料理に使ってみた。結構美味しかった。なんだかドラえもんのどこでもドアみたいな気分がした。買い足そうと思ったけれど、二度と見つからなかった。

そもそも自動販売機には、魔法の箱みたいなわくわく感もある。

子供の頃...

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