生活の基盤となるインフラ産業は、わかりやすいモノを介したコミュニケーションが難しく、それゆえ企業に対する信頼は必要だが、その醸成には難しさがある。長年、日常生活を描いたCMで数々の広告賞を受賞してきた東京ガスでは、どのようなコミュニケーションを行っているのか。広報部の中塚千恵氏に話を聞いた。
日常生活にフォーカスしたストーリー性のある企業広告
イメージキャラクター「パッチョ」や妻夫木聡さんを起用した『ガス・パッ・チョ!』シリーズ(2006年以降)、直近では安田顕さんが出演する水回りの修理サービスのCM『♪しゅ・しゅ・修理の東京ガス篇』(2022年5月放映開始)など、サービスそのものを扱う広告展開も多い東京ガス。一方で、同社は「家族の絆」シリーズをはじめ、日常生活にフォーカスしたストーリー性のある企業広告を制作してきた。家族と料理を題材とした「家族の絆」シリーズは2008年から2019年にかけて11年にわたり続き、その多くが、広告電通賞やTCC賞、アジア太平洋国際広告祭などで受賞。その後の「家事ルーレット」篇、「がんばれ私たち」篇では、コロナ禍で変化した環境で、前向きに進む人々の姿を描いてきた。
2022年2月より放映開始した「子育てのプレイボール」篇は、共働きの夫婦が初めての子育てに戸惑いながらも、家族や同僚、街中で出会った人々に支えられながら奮闘する姿を、野球の試合に見立てて描いた90秒の動画だ。
今回はCMに関連し、ハッシュタグ「#子育てをチームプレイに」を軸にした、SNSを活用したデジタル上のコミュニケーションも重視。視聴した人々の動画への想いを受け止めると共に、子育てに関わる同社の取り組みについても情報発信を行った。
同社においては、コーポレートブランディングを担う広報部が企業広告を実施するという。広報部広告グループの中塚千恵氏は、長年続く企業広告のなかで『エネルギーのある日常生活』という軸は変わらず、その時々の時流を捉えたシーンを描いてきたと話す。
「当社はグループ経営理念として『人によりそい、社会をささえ...