「mRNA(メッセンジャーRNA)」を使用したワクチンにより、日本はもとより世界的な認知度を獲得したモデルナ社。そんな同社は2022年10月より日本市場にてテレビCMの放映を開始した。テレビCMに期待する効果とは何か。その背後にある戦略とは。同社コミュニケーションズ&メディアシニアディレクターの清水俊亨氏に話を聞いた。
テレビCMによって「正しい知識」と「親近感」を
通常、社名の認知拡大を図るだけでも難しい企業のコミュニケーション活動。そんな課題を瞬時に解決したのがモデルナ社ではないだろうか。
この数年で、日本においてもほぼ国民的と言えるような認知度を獲得した同社。通常は、社名の認知と歩みを合わせて企業活動の理解も浸透していくもの。そうしたプロセスを経ずに知名度を獲得した企業はその後にどのようなコミュニケーション展開を考えるのだろうか。
モデルナ社の日本法人であるモデルナ・ジャパンの設立は2021年。2022年10月より、同社の事業への理解浸透を目的にしたテレビCMの放映を開始した。

重厚な音楽と朗読による60秒のCM。タンパク質生合成の過程や細胞の構造を、自然環境と組み合わせたCGを用いて表現している。
新型コロナウイルスワクチンに用いられているmRNAの技術は、がん治療用のワクチンや再生医療にも応用が期待されているもの。同社は2010年の創業以来、テクノロジー企業としてmRNA技術の開発にフォーカスし続けてきた。
しかし「今回、その社名は『COVID-19のワクチンに特化した企業』という認識で広がっていきました」と話すのは、同社でコミュニケーションズ&メディアシニアディレクターを務める清水俊亨氏。そして、このタイミングでテレビCMの放映に至った背景について、次のように語る。
「日本市場で調査を行ったところ“mRNAの名前は聞いたことがあるけど、その内容についてはよくわからない”という人が多かった。加えて、“mRNAは体内に残って悪さをするのではないか?”とか、“遺伝子改変なんでしょう?”といった誤った認識をされている方も多くいらっしゃいました」。
実際、新型コロナウイルスワクチンを巡っては多くの情報が入り乱れ、人々の間に少なからぬ混乱を生んだ。
「mRNAに関する誤った情報が、SNS等で拡散されてしまったことが...