コロナ禍により、デジタル化に一層の拍車がかかった。ダイレクトマーケティングにおいてもデジタルでの施策が隆盛したが、その一方で現在はリアルでの顧客接点に回帰するような企業も多く見受けられるようになっている。アフターコロナを見据えた、リアルとデジタルを掛け合わせた新たなダイレクトマーケティング施策や可能性について、電通の米村俊明氏が解説する。
Webの技術が進んだ今、多くは「ダイレクト」マーケティングに
「ダイレクトマーケティング」とは、今から半世紀以上前にレスター・ワンダーマン氏が提唱した顧客と個別・直接的なコミュニケーションを行って、相手の反応(レスポンス)を測定し、ニーズや嗜好に合わせながら顧客本位のプロモーションを展開するマーケティング手法です。
古くから、通販ビジネスのマーケティング活動で多用されてきたダイレクトマーケティング。2000年代以降は「ダイレクトレスポンス(ダイレクトセリング)広告」と呼ばれる、テレビショッピングを典型とするフリーダイヤルや検索ワードを明示して購買行動を喚起する広告表現をはじめ、初回購入者あるいは見込み客を獲得するためのマス・マーケティングも含めた一連のコミュニケーション手法(図1)としてもその概念も拡張してきました。
現在はデジタル技術の進展により、Web広告やデータの利活用においても、レスポンスの測定と可視化・普遍化が進んでいます。もはや「ダイレクト」と称する必要がないほどにマーケティングの主流となっていると考えてもよいでしょう。
新規獲得と既存との関係維持が同時にできるCRMが理想
ダイレクトマーケティングの魅力は「広告を投資」と捉え、費用対効果が厳格に可視化されることにあります。レスポンス結果を数値で測ることができるため、データの蓄積が進めば、メディアプランニングやクリエーティブのチューニングも容易になり、特に新規顧客の獲得フェーズにおいて再現性の高いコミュニケーション設計が可能になります。
ただし、レスポンスの高いコミュニケーションの再現性を追求すればするほど、企業は異なっていてもメディアやクリエーティブ表現がどれも同じようになってしまうというジレンマに直面せざるを得ません。
こうした課題に対してアプローチする際には「競合との差別化をいかに行うか」という視座が重要になります。
そこで、重要になるソリューションが、既存顧客のLTVを高めるCRM活動です(図2)。