2022年4月1日、改正個人情報保護法がついに施行された。すでに多くの企業で対応は進んでいるものの、改めて個人情報保護法が企業のデータ利活用に与える影響についておさらいしておく必要がある。事業者が注意すべき点を、今回の改正で新たに加わった「仮名加工情報」と「個人関連情報」の2つの観点から日本情報経済社会推進協会の坂下哲也氏が解説する。
“利用されていると知れる”環境づくりが求められている
個人情報保護法は、個人情報の「取得」、「保管」、「利用」、「廃棄」という基本プロセスの中で、事業者がやらなくてはならないこと・やってはいけないことを定めているものです。令和2年6月12日に「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、4月1日より一部を除き施行されました。
今回の改正について、個人情報保護委員会は、「AI・ビッグデータ時代を迎え、個人情報の活用が一層多岐にわたる中、事業者が個人情報をもつ本人の権利利益との関係で説明責任を果たしつつ、本人の予測可能な範囲内で適正な利用がなされるよう、環境を整備していくこと」をポイントのひとつとし、改正したと説明しています。
データ解析技術が進展し、個人情報というデータの利用が進んでいく一方で、内定辞退率の算出など、AIを活用したことによる差別的な扱いなどが問題になったことは記憶に新しいでしょう。今回の改正は、このような問題の発生を踏まえ、事業者において“本人が予測可能な範囲内で自身の個人情報が使われていること”を知る環境をつくり、“適正な利用を行うこと”を求めるものです。
本稿では、主にマーケティング関係者の読者の皆さんが「個人情報」というデータを利用するために新たに定められた「仮名加工情報」と「個人関連情報」についてのポイントを解説します。
新たに加わった仮名加工情報と個人関連情報
今回の改正では仮名加工情報、個人関連情報が新たに加わりました。個人情報の利用の規制がより強まる中で、ビジネス上の利用を見据えると、「仮名加工情報」「個人関連情報」という「個人を特定されない形で保持するデータ」という枠組みが必要になってきます。本改正から明確にされたこの2つの個人情報の特徴を見ていきましょう。
〇仮名加工情報
仮名加工情報とは、①個人情報に含まれる、特定の個人を識別できる氏名、生年月日その他の記述を削除したもの、②個人識別符号をすべて削除したもの、を指します。また、③その削除にあたっては...