貿易摩擦や規制強化にともなう保護主義的な潮流を背景に、1980年代後半から議論されているカントリー・バイアス(外国に対する先入態度)。「バイアス」というと、「偏見」とも訳されるようにネガティブな印象があるかもしれない。これまでのカントリー・バイアスを扱う研究でも、消費者のエスノセントリズム(自民族中心主義)(Shimp and Sharma,1987)やアニモシティ(敵対心)(Klein, Ettenson,and Morris,1998)といった、ネガティブな態度に焦点を当てたものが多い。
しかし本書『多文化社会の消費者認知構造』は、国家に対する態度のなかでも、国家や民族といった枠組みの価値観にとらわれない、異文化に対して寛容さをもった「消費者コスモポリタニズム」(Cannon,Yoon,McGowan,and Yaprak,1994)や、特定の国家に対する好意や愛着を意味する「消費者アフィニティ」(Jaffe and Nebenzahl,2006)といった、ポジティブな概念を中心に検討していることが特徴だ。
特定の国家に対するネガティブな感情は、政治経済や歴史といったマクロ的な要因から形成されることが多く、そうした“嫌悪感”は...
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