
「お中元」の文化とマーケティング
百貨店と消費文化の関係性
● 著者/島永嵩子
● 発行所/同文舘出版
● 価格/3200円(税別)
百貨店は、新型コロナウイルス感染拡大で最も大きな影響を受けたといわれている業界のひとつだ。
年間を通し、歳末に次いで高い売上をつくる「中元商戦」は2020年、緊急事態宣言の最中に始まった。店頭への客足は遠のいた一方、各社はECサイトでの品ぞろえを充実させた結果、ギフト販売のオンライン化が進んだ。消費者の中で、直接人と会うことができない代わりにコミュニケーションのひとつとして中元を利用した人や、「自分へのご褒美」として比較的高価格帯の商品を購入した人など、新たな動きがみられている。
本書『「お中元」の文化とマーケティング』は著者の島永嵩子氏による、これまでの研究を基に新たにまとめた一冊。「お中元」という日本独自の贈答文化に焦点を当て、百貨店と消費者の関係性を読み解く。
同氏は本書について、「中元文化の生成と変遷プロセスについて内容分析を行い、百貨店のさまざまな意図と消費者による文化の実践との相互作用の中で、今日のような消費文化が形成されてきたことを明らかにすることを試みた」と話す。
中元贈答の習慣が一般の人々の間に広まったのは江戸時代の初期。商人たちが、決算期となっていた...