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2021年 マーケティング予測

3名のマーケターが秀逸事例で振り返る コロナ禍で機能したマーケティングとは?

鈴木 健氏(ニューバランスジャパン)、廣澤 祐氏(花王)、多々良 樹氏(電通)

コロナ禍において、企業と消費者の接点がつくりづらくなった2020年。この環境において、どのような取り組みが関係性の構築、あるいは維持に貢献したのだろうか。国内外の事例に精通する実務家3名が、2020年の秀逸事例を振り返り、その共通点を分析した。

──2020年は企業を取り巻く環境が大きく変化しました。そのなかでも、皆さんが秀逸と思った事例を教えてください。

鈴木:他の人と被ってしまうとおもしろくないので、私からはあえて王道を避けた事例を。1つ目はHOTEL SHE,とCRAZYのコラボ企画「SHE,is CRAZY about THE DAY」。これは「毎月とどく、結婚式の定期便。」という企画です。2020年を語る上では、外すことのできない「コロナ」ですが、コロナ禍で生まれた企画のなかでも特に秀逸だと感じました。

ホテルでの結婚式を取りやめざるを得ない状況から、新しい結婚式の形を模索し、カップルが本質的に求めている「お互いを知る」ということに対してサービスを再構築した事例だと思いました。

2つ目はヤマトグループが2020年11月に放映したテレビCM「未来より先に動け。」です。

今年、最も社会のインフラとしての役割を発揮した産業のひとつが運輸業だと思います。しかし、このCMはその現状に満足することなく、次のサービスへ向かっていこうとする姿勢を示すものです。今後、デリバリーそのものの進化が注目されると思い、選びました。

そして具体的な事例ではないのですが、気になっていることがひとつ。それが渋谷横丁、虎ノ門横丁、広尾のEAT PLAY WORKSなど、「横丁文化のアップデート」です。

コロナ禍で飲食文化が衰退しかねないなか、都心にオープンな形で人が気軽に集まれる場所として、「横丁」を新しくアップデートする文化が生まれつつあると感じます。高級なレストランで出されるような上質な料理を、はしごしながら味わうスタイルは、コロナ禍での新しい人の交流を考えさせられ、こういう空間をつくっていく必要性を感じました。

廣澤:たしかに通常の飲食店とそれほど変わらない環境、むしろ密になりやすいイメージでありながら、なぜ横丁に人が集まるのかは気になります。ただ、気軽さという理由は大きそうですね。僕もこの前、商業施設のなかにある店舗に入ろうとした際に、入り口に検温や消毒のための人や設備が厳重に置かれており、ちょっと商品を見たいだけなのに…と入るのをためらってしまいました。

もちろん対策は仕方ないことですが、かなり入店の目的が明確でなければ入りにくくなっていますね。ウィンドウショッピングの魅力って何だろう、と考えてしまいました。

鈴木:一方で来店からのCVRは高くはなりそうですね。

多々良:そういう意味でも、横丁の雑多感や、いつでも出入りしやすいという提案に消費者はメリットを感じそうですね。ただ、昔でいう横丁とは違って、きちんと全体が管理されていることが安心・安全を生んでいそうです。

    CASE STUDY

    人を惹きつける新しい横丁スタイル
    「虎ノ門横丁」「EAT PLAY WORKS」「渋谷横丁」


    今年は、6月11日に「虎ノ門横丁」、7月20日には広尾に「EAT PLAY WORKS」、8月4日には「渋谷横丁」と続けて、横丁スタイルの新施設が開業した。

    「虎ノ門横丁」は「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」の商業施設に入っており、26店舗が集まる。店舗選びを監修したマッキー牧元氏による「虎ノ門横丁POPUPレストラン」には、期間限定でさまざまな店舗が出店する。

    「EAT PLAY WORKS」は食とウェルネスとワークカルチャーを融合した商業施設。「食べて」「遊んで」「仕事して」をコンセプトに、飲食店など17店舗、プライベートオフィス、メンバーズラウンジで構成されている。

    「渋谷横丁」は「MIYASHITA PARK」内「RAYARD MIYASHITA PARK」South1階に位置し、全国の郷土料理や産直食材を提供する地方特化飲食店を集めた横丁。昔懐かしい商店街をテーマに、レトロなちょうちんや昭和の看板、標識などを設け、エンタメ性を重視。“毎日が食フェス”な横丁を展開している。

──廣澤さんが秀逸と感じた事例を紹介ください。

廣澤:僕は事例選定の際に、コロナ禍でのスピード感や決断力が優れていたものを選びました。

コミュニケーションの観点では、特にオンワードホールディングスのテレビCM「今、私たちは、試着室の中にいる」、リモートで撮影された大塚製薬のテレビCM「ポカリNEO合唱」は、コロナの初期段階という、制作に割けるリソースが限られる状況で、これらのCMを打ったスピード感には驚きました。

大塚製薬は「CMのリモート撮影」という過去にない方法をすぐに実現し、オンワードホールディングスのCMでは、外出自粛の中で、家を試着室に見立てたコロナ禍でのメッセージにいち早く打ち出していました。

また、ビジネスモデルの転換という点で優れていると思ったのが、ワタミの展開している「から揚げの天才」です。コロナ禍でのリアル店舗への逆風とテイクアウト需要の拡大を受けて、6月2日時点で7店舗だったところが、現在はすでに60店舗近くにまでなっています。現在は焼肉業態への転換にも注力しているようですが、彼らの根幹にあった居酒屋というビジネスモデルから、一気に方針を転換してここまで急速に拡大するには、優れた決断力がなければできないと思いました。

決断力という点で言うと、キリンビールが提供する「ホームタップ」も挙げたいと思いました。

コロナ前は「自宅にわざわざ専用の機器を入れて生ビールを飲むくらいなら、近場の居酒屋に行った方がよいよ」という人もいたと思うので、ある意味...

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