東京大学を卒業、インド商科大学院でMBA取得。さらに、世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leadersに選出され、仏教界の起業家と呼ばれる僧侶がいる。松本紹圭氏だ。住職向け経営塾「未来の住職塾」を開講するなど"お寺改革"を続けてきた松本氏は、これからの広告・コミュニケーションをどう考えるのか。
サイロ化していた仏教界 "お寺改革"で横の風穴を開ける
悠久の歴史の中で伝承されてきた日本の仏教界において、新風を起こし続ける僧侶がいる。東京神谷町の光明寺に僧籍を置く松本紹圭氏だ。
松本氏は、お寺カフェ「神谷町オープンテラス」や仏教Webマガジン「彼岸寺」の企画など、固定概念にとらわれない"お寺改革"を推進。宗教や宗派でサイロ化していたという仏教界に、横の風穴を開け、新しい文化をつくってきた。
家業として世襲する僧侶が多い中で、自ら弟子入りを志願し、仏門に入ったという松本氏。その強みを生かし、ひとつのお寺に縛られないフリーランスの僧侶として全国的に活躍している。
近年では大きく分け、2つの活動に注力しているという。ひとつは自身が代表を務める「未来の住職塾」という住職向けの経営塾、もうひとつが「テンプルモーニング」だ。
ひとつ目の「未来の住職塾」の立ち上げのきっかけとなったのはお寺を支える檀家の減少など、今までどおりの在り方ではお寺の継続が難しくなっている時代の変化だ。松本氏は「諸行無常という言葉のとおり、すべてのものは変化する。変化を前に、手をこまねいていては何も始まらない。歴史ある仏教とはいえ、変化に対応していかなければならない」と考えたという。
そこで自分なりに仏教、そして社会のために何ができるのかを考えた結果、始まったのが2012年にスタートした「未来の住職塾」だった。
「お寺を守りながら頑張っている全国各地の住職と、その現場を支えるようなことがしたかった。これまでもお寺は時代に合わせて、形を変えながら、現在まで受け継がれています。ですから現代の僧侶も、変化を恐れるのではなく、変化に対して何ができるのかを考えた方が良い。その学びが得られる場所をつくることに意味があるのではないかと考えました。開講以来、数えきれないほどのお寺とつながることで継続することができています …