欧州最大級のクリエイティブフェスティバル「Eurobest 2018」が12月、ロンドンで開催された。同広告賞は、アジアの「Spikes Asia」、中東の「Dubai Lynx」と並ぶカンヌライオンズの地域版フェスティバルで、今年で30回を迎えた。各部門の最高賞受賞作品の中から、ユニークな取り組みを紹介する。

01 ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門/ヘルスケア部門:MARCEL
法の不条理に抗った、小売企業の挑戦
Carrefour「Black Supermarket」


驚くべきことにEU諸国において人々は、同地域に現存する穀物や野菜、果物のうちわずか3パーセントにしかアクセスできない状態にあった。残る97%に当たる約200万品種の販売は「違法」。EUの法令下で生産者が販売できたのは、公式に定められた「認定品種」のみであったからだ。
この状況に異を唱えたのが、フランスの大手スーパーマーケットチェーンのカルフールだ。同社が法改正を目指し行った取り組みがこの度、ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門とヘルスケア部門で最高賞を獲得した。
先の法令化において、各地域固有の品種等の販売は違法行為と見なされ、こうした野菜や果物は栄養価や味に優れ環境にも優しいにも関わらず、消費者から遠ざけられていた。農家は人為的につくられたハイブリッド種と呼ばれる認定品種に頼らざるを得ず、認定品種の決定には活発なロビー活動を行う農薬関連団体が影響力を持っていた。
彼らとの全面対決を避けつつ消費者の賛同を得、多様で持続可能な食を実現するにはどうしたらよいか。水面下で交渉を重ねるロビイストらに対し、公衆の面前で問題提起をするためにカルフールが選んだのは、小売企業にとってのメディアである店舗を最大限に活用することだった …