コラージュを駆使した作品が話題になり、企業やアーティストからも人気を集める、とんだ林蘭氏。気鋭のアーティストの目に、広告はどう映っているのか。

とんだ林蘭(とんだばやし・らん)さん
1987年生まれ。東京を拠点に活動を行う。コラージュ、イラスト、ぺインティング、立体、映像など、幅広い手法を用いて、日々の生活から着想を得たさまざまなモチーフを組み合わせ、猟奇的でいて可愛らしく、刺激的な表現で作品を制作している。名付け親である池田貴史(レキシ)をはじめ、木村カエラ、東京スカパラダイスオーケストラ、あいみょんといった音楽アーティストをはじめ、ラフォーレ原宿クリスマス広告ビジュアルや、コーチ、アニエスベー、ポールスミス、ミハラヤスヒロなどのファッションブランドにも作品を提供。
人との出会いがアーティストへの道を開いた
東京スカパラダイスオーケストラ、木村カエラ、あいみょんなど、ミュージシャンのアルバムジャケットやグッズのデザインを手がけ、注目を集めてきたアーティスト、とんだ林蘭氏。2018年にはインターメスティックのアイウェアブランド「Zoff(ゾフ)」のサングラスコレクションでアートディレクターを務めた。渋谷の商業施設「MAGNET by SHIBUYA109」のビジュアルでは、れもんらいふの千原徹也氏と共同でアートディレクターを担当。女優の安達祐実さんを起用したポスターが話題となっている。
幅広いジャンルの仕事を手がけているが「同じ雑誌の仕事でも、企画が変わると内容も変わってきます。毎回初めての経験で、飽きることなく日々の仕事に取り組んでいます」と、とんだ林氏は話す。
これまでも企業の広告に作品が使われることはあったが、Zoffでの仕事は、より主体的な形で制作に携わった。本格的な広告制作は初めてということもあり、広告業界のクリエイターらとチームを組んで臨む仕事は刺激的なものとなった。
「初めてだったので当時は大変さもよく分かっていませんでした。チームの人は長く広告の世界で働いてきた人たちで、終わってから『異例の仕事だったよ』と言われても、その異例さもよく分からないくらいで。普段、個人で活動している分、制作しているときはチーム全員が一丸となって取り組む状況が仕事上の関係ではなく、ちょっと学生時代の文化祭のような雰囲気もあって、今でもチームの人と会うとそのときを思い出して嬉しくなります」(とんだ林氏)。
文化服装学院を卒業後、アクセサリーの販売などをしていた同氏。販売の仕事は楽しかったと言うが「10年後、30代で販売の仕事をしているイメージがわかなかった」と、将来を模索していた。当時住んでいた浅草で出会った衣料品店が現在への道を開いた。
キャリア初の個展の会場にもなった、隠れ家的なその店は、さまざまな業界で活躍する人物が訪れていたという …