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私の広告観

未来のためにスポーツを言語化 良い言葉はデザインとしても生きる

伊藤滋之

記憶に残る名勝負のスポーツ中継番組、人気沸騰の長寿番組は、放送作家をはじめとするクリエイターのたゆまぬ努力と、アイデアが支えています。30年以上スポーツ番組の放送作家として活躍する伊藤滋之氏に、放送作家として意識していること、メディアのこれからを聞きました。

伊藤滋之(いとう・しげゆき)さん
放送作家、プロデューサー。北海道出身。1987年より古舘プロジェクトに所属。30年を超える放送作家のキャリアで、手掛けた番組の8割以上がスポーツ番組。代表的なキャッチコピーに「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」。タイズブリック代表取締役。スポーツを言語化するプレゼンショー「ALE14」総合プロデューサー。最近、手掛けた主なテレビ番組には、「才色健美~強く、そして美しく~with Number」「東京ビクトリー」「大谷翔平の来た道~二刀流の現在・過去・未来~」「宮里藍、幸せな決断。」「超人女子」「サンデーLIVE!!」「気づきの扉」「アスリート・インフィニティ」など。著書には、メディアファクトリー新書『あの実況がすごかった』など。

斬新な切り口やアイデアをつくる放送作家は番組の影の立役者

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会までカウントダウンが始まっている。スポーツ庁では「スポーツが変える。未来を創る。Enjoy Sports, Enjoy Life」をスローガンに、スポーツを通じた健康と楽しさ、絆の強い社会をつくる"一億総スポーツ社会"の実現を目指すと発表している。各メディアにおいても、スポーツを扱ったコンテンツは人気を集める。各局のスポーツチャンネルや関連のSNS、あるいはスポーツ観戦を楽しむ人も少なくはないはずだ。

その裏には、コンテンツを発信するクリエイターが工夫を重ねている。放送作家・プロデューサーの伊藤滋之氏もそのひとり。「放送作家を30余年させていただいていますが、その8割がスポーツ系の番組です」と語る伊藤氏は、オリンピックやサッカーW杯ほか「報道ステーション」など人気テレビ番組の影の立役者だ。TBS系列の黄金番組「筋肉番付」から生まれた的当てゲーム「ストラックアウト」の名付け親という横顔も、業界ではよく知られている。

そもそも、放送作家とはどういう仕事なのだろうか。一般的には、番組の「企画」や「構成」を考え、「台本」を書くことが主な仕事とする説もある。アナウンサーやリポーターが読む原稿や出演者が話すセリフ、場面の設定、キャスティングの案出しなども放送作家の仕事だ。

例えば情報番組で「スイーツ」を紹介するなら、スイーツについての知識を幅広く網羅し、そこから番組構成や台本をつくる。番組の制作会議から収録の立ち会い、編集作業中のVTRの試写に参加し、空き時間に企画会議用の資料まで作成。まさに分刻みのスケジュールで動く「縁の下の力持ち」的存在なのだ。

「僕らはテレビやラジオのディレクターやプロデューサーの方に呼ばれて行くのですが、彼らが何を求めるかによって、やるべきことが変わります。例えば理詰めで演出を組み立てるタイプのディレクターは、型にはまらないアイデアマンの作家を求め、感覚的に演出を組み立てるのが得意なディレクターは、ロジカルでまとめ上手な作家を求める。呼ばれるには理由があるのです」。

そのため、伊藤氏は「放送作家」の定義は人それぞれだと話す。中には自称「会議屋」と称し「番組の企画会議に呼ばれてアイデアを出すことが自分なりの放送作家」という人もいるという。定義はそれぞれ異なるとしても、自分の考えを相手に一方的に押しつけないことが放送作家の仕事においても重要と伊藤氏。

相手が期待するものを超える面白いネタや企画力を持ち、「絶対にこの人は側に置きたい。自分が不得意な分野を埋めてくれる右腕のような存在と相手に思っていただくのがコツだと思います」と話す。

伊藤氏は、元々放送作家を目指していたわけではなかったそうだ。「幼少期の頃からテレビっ子ということもなく、どちらかといえばスポーツを楽しむ優先順位のほうが高かった」という。では、どうしてこの道に入ったのだろうか。

伊藤氏は「学生の頃に行きつけの飲食店があり、そこのマスターと親しくなって、店の常連である多様な人たちの仕事なども手伝い始めたのです。そうして手伝いを続けるうちに放送作家の仕事も手伝うようになり、気づいたら放送作家の道を歩き始めていました」と振り返る。

スポーツに関する知識の情報量が豊富だった伊藤氏は、その知識やアイデアを重宝され、スポーツ番組を手掛けるように …

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