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私の広告観

写真家・立木義浩氏に聞く、時代の流れの変化と「広告」

立木義浩

カメラマンとして50年以上のキャリアを持ち、数多くの作品を発表してきた写真家、立木義浩氏。ファインダーを通して、世の中の「瞬間」を切り取ってきた立木氏の目に「今」はどう見えているのか。

立木義浩(たつき・よしひろ)さん
1937年徳島県生まれ。1958年アドセンター入社。1969年よりフリーランスとなる。女性写真、スナップ・ショットで多くの写真を発表。広告、雑誌、出版分野などで活動する。1965年に第9回日本写真批評家協会新人賞、1997年に日本写真協会賞年度賞、2010年に日本写真協会賞作家賞など受賞。写真集に『イヴたち』『加賀まり子/私生活』『マイ・アメリカ』『東寺』など、近年では『Tōkyōtō』『動機なき写真』を出版。1965年のデビュー作『舌出し天使』が秋に出版予定。

モノクロ写真はラジオ 見る人の感性が試される

2018年9月に東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて写真展「Yesterdays 黒と白の狂詩曲(ラプソディ)」を開催した立木義浩氏。

立木氏は、日常の瞬間、過ぎ去りし日々の一場面を切り取るスナップショットを撮り続けてきた。立木氏はスナップショットを「時代を呼吸しながら撮るもの」と表現する。

「スナップショットというものはその瞬間に感じたものを撮ります。テーマを決めて、それに沿ったものを撮ることとは全く違うものなので、五感で感じながら直感で撮るものです」。

"感じて撮る"ということは、考えたことを再現するのではなく、現場で遭遇したもの(感じたもの)に共感して寄りそうものらしい。

「写真に限らず、映画でも、日本人はついつい『テーマは何ですか』と聞きたがる。本当は見ればわかるはずなんです。そこで作者が何かを言ってしまうと、言葉というのは影響力が強いから、そっちの方向へ誘導されてしまう。聞く方も分かっていて、それを聞き出そうとする。写真を前にして言葉で説明されなければ気が収まらないというのは、典型的な現代病です。言葉に翻訳されにくい写真の魅力があるんです」。

モノクロ写真を中心に構成される写真展だが、その一角には4枚のカラー写真も展示されていた。立木氏は、モノクロ写真とカラー写真の違いをテレビとラジオに例える。

「カラー写真はテレビのように、向こうから情報がわーっとやってきます。テレビは、こちらがじっとしていても、お酒を飲んでいても、居眠りしていても、勝手に映像や音といった情報が与えてくるのです。一方でラジオは映像がないから、そこから流れてくる音に聞き耳を立てないといけません。モノクロ写真も、聞き耳ではなく、"聞き目を立てる"というか、目でしっかり見ないと伝わらない。撮った人の都合で情報が覆いかぶさってくるものではなく、見る人がそこから何かを感じ取りに向かっていく、そういう情報の流れになるのがカラーとモノクロの大きな差です」。

分かりやすさが求められる時代「広告」の表現は変わった

50年を超えるキャリアの中では、ファッション、広告などさまざまなジャンルの仕事に携わってきた。スナップショットが「瞬間」を捉えるように、「広告」というものが「時代」の空気を伝えているという見方もできる。立木氏にとって「広告」とはどんな存在なのか …

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