6月17日、アマゾンは大手スーパーマーケット「ホールフーズ(WF)」(1)を137億ドル(約1兆5000億円)で買収すると発表した。Eコマースの巨人とオーガニック・スーパーマーケットは一見異色のカップルのように見えたが、背景には深い意味が隠されていた。さらに8月28日に買収手続きを終えたアマゾンは、その日から一部商品を値下げし、アメリカ中を驚かせた。本号ではWF買収以降のアマゾンと競合各社の動きを整理してまとめた。

頻繁に購入する食料品の購買履歴でデータ活用のリコメンドの精度が高まる
(1)アマゾン・ホールフーズ


アマゾンのWF買収の目的は大きく分けて2つあると言われている。1つはリアルな店舗を増やすこと。アマゾンは昨年シアトルにブックストア一号店を開店して以来、徐々に直営店を増やし年内には10店舗になる予定だ。WFを買収したことで傘下の店は一気に約450店舗になった。次に、これまで蓄積した膨大なデータを店舗での食料販売に生かすこと。アマゾンは購入履歴から顧客の傾向を分析し、購買の推奨を行っている。
今後は両社のクレジットカード履歴を摺り合わせ、オンライン(アマゾン)とオフライン(WF)両方のデータを相互のビジネスに役立てることができる。
例えば、栄養価が非常に高くセレブ御用達の野菜、ケールを頻繁に購入している健康志向の高いWF顧客には、アマゾンからメールでヨガパンツやジョギングシューズなどを勧める。反対に、アマゾンでビタミン剤を定期購入している顧客には、ミネラル成分を多く含んだWFのオーガニックドリンクを勧める、ということが可能になる。
アマゾンはなぜWFを選んだのかという疑問に、ビジネスニュースのCNBC.comは「競合スーパー顧客に比べてWF顧客は裕福。典型的なWF顧客は月平均1000ドル(約11万円)以上購入している」と解答する。また「WFの自社ブランド『365』も魅力のひとつ。アマゾンは近年、8つの自社ファッションブランドを立ち上げており、自社ブランド・ビジネスは伸びる傾向にある」という。
そしてアマゾンの究極の目標は、各メディアや専門家が指摘するように、AI搭載スマートスピーカー「Echo」と「Alexa」に顧客データを蓄積し「そろそろ香辛料クミンが切れる頃では?最後の購入は3カ月前ですよ」と購入を促すこと。つまり家庭の台所の戸棚にある在庫まで把握しようというものだ ...