「wisdom」のリニューアルに学ぶコンテンツのあり方
NECは、自社情報メディア「wisdom」を10月にリニューアル。2004年より10年以上に渡って貫いてきたメディアポリシーを見直し、より事業に貢献するサイトへと再構築を進めている。
失敗しない!「コンテンツマーケティング」
日本最大級の住宅・不動産情報サイト「HOME’S」を運営するネクストの、住まいと不動産に特化した情報サイト「HOME’S PRESS」。公開から3年が経過し、ユーザー数は2015年で約198%、2016年はそこからさらに130%増と伸ばしている。毎日更新するという同メディアのコンテンツ制作法に迫った。
「HOME’S PRESS」編集部とマーケティング戦略部長の久松氏。
久松 私はHOME’S事業本部の中でマーケティング戦略全般を担当しています。マーケティング戦略部では今、3つの取り組みを推進中。ひとつが来年4月の社名変更に合わせた準備とともに、このタイミングでHOME’Sというブランドの一層の強化を推進すること。2つ目は、会社に点在するデータを集約させて、ネクスト内のDMPを構築すること。3つ目が、オムニチャネルへの対応。色々な顧客接点から、ユーザーに価値を提供する活動を構築することです。これら3つを推進するための取り組みのひとつに「HOME’S PRESS」があり、実務はすべて八久保に任せています。
八久保 「HOME’S PRESS」の立ち上げから参加させてもらい、今は編集長として全体を見ています。
久松 「HOME’S PRESS」の編集方針には、当社の創業理念が大きくかかわっています。当社は、代表取締役の井上高志が1995年に創業しました。前職で分譲マンションの営業をしていた井上は、担当した若いご夫婦が井上の薦めた物件を気に入ってくれたが、ローン審査が通らずに落胆。そこで自社の担当外の物件も含めて情報を集めて提供したところ、他社物件で気に入った家が見つかり、購入に至ったという体験をしたといいます。上司からは当然、きつく叱られたそうですが、そのとき、「家」という人生最大の買い物をするのに、限られた公開情報の中から選択しなければならない状態はおかしいと考えました。「すべての不動産情報を公開する仕組みを構築したい」という一念が生まれ、創業に結びついたのです。この一念が今でも当社が事業を考える上での根幹になっています。
八久保 目指したのは、日本の不動産情報を100%網羅した巨大なデータベースを構築し、リアルタイムに情報が更新される仕組みをつくることです。
久松 そして実際「HOME’S」の登場によって、情報誌など紙メディア中心だった不動産の賃貸・売買物件がインターネットで閲覧・比較検討できるようになりました。以後成長を続け、2005年には加盟店舗数で1万店舗を達成。2013年からは第2成長期と位置づけ、新規事業にも注力し始めました。この年に「HOME’S PRESS」を立ち上げました。
八久保 現在は、「不動産業界を変革する」を旗印にした「中長期戦略」を掲げ、さらなる飛躍的な成長を目指しています。
久松 その中長期戦略には、4つのフェーズがあります。土台が「不動産業界の変革」で、情報や評価の網羅・可視化を推進しています。もう一つは「不動産市場の活性化」。いま空き家の増加が社会的な問題にもなっていますが、民泊で利用してもらうなど新たな用途の開発や、不動産取り引きのオンライン化を進め、市場活性化を図っていきます。そうして「不動産市場を拡大」し、さらには「グローバルフラットフォームの構築」を目指しています。世界中の不動産物件を母国語で探せるようなプラットフォームをつくりたいと考えています。
八久保 最終的には、ニューヨークの5番街のアパートとか、ロンドンのテムズ川沿いの物件とか、世界中の物件情報をインターネットで見ることができて、取引までできる仕組みの実現を目指しています。
久松 それは夢物語などではありませんし、基となる技術はすでに生まれています。昨年10月にサービス開始した「HOME’Sプライスマップ」では、ビッグデータを活用して地図上から国内の首都圏・関西25万棟、224万戸の参考家賃と参考売価、間取りや内観写真の閲覧が可能です。閲覧できるプライスは査定額ではなく、過去HOME’Sに掲載された数千万のビッグデータを独自のアルゴリズムで解析して算出したもので、かなり価格の精度が高いと評判です。今後もエリアを拡張していく予定です。
八久保 2013年に「HOME’SPRESS」を開設する際に感じていたのは、「日本の不動産・住宅産業には改善・変革すべき課題がまだまだある」ということです。例えば価格や、手数料、見積もりなどの不透明さなど。ユーザー自身の住まいに対するリテラシーの低さも課題に感じていました。そこで、より良いサービスを提供する会社が信頼を持って支持されることで ...